苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

タイトル会社がごねて家が売れなくなりそうになった話

ここ三か月くらい家を売るという話をずっとしてきたが、遂に明後日の金曜日に引っ越しが決まった。かかった期間としては短いが、非常に多くの問題が生じ一時はどうなることかと思った。アメリカで家を売るってのはこんなに大変なことなのかと今更ながらつくづく思う。そしてもうこんなことは二度としないで済むんだと思うとホッとする。

では本日は家売るさいに私が体験した一番の問題点について書いておこう。その前に多分日本とは手続きが全然違うと思うのでちょっとここで説明しておこう。プロのサイトアメリカ不動産を売却する方法は?手順や費用、注意したいポイントも | 不動産投資コラム | 未来がもっと楽しみになる金融・投資メディア「HEDGE GUIDE」より引用。

  1. アメリカ不動産売却の手順
    1-1.アメリカ不動産の売却を依頼するエージェントを探す
    1-2.アメリカ不動産の売出価格を決める
    1-3.物件広告を掲出して売却活動をスタート
    1-4.買手候補者からのオファーを受ける
    1-5.売買契約書を締結してエスクローを開設する
    1-6.買主によるインスペクションの実施
    1-7.クロージングと所有権移転登記

    1-8.確定申告する

ところでアメリカではタイトルなるものが存在する。それは何かという説明はこちらアメリカ不動産で耳にする用語Title(タイトル)とは? – アメリカ不動産購入 / 投資のご相談なら – Wedge Realty Consulting, LLC (wedgerc.com)から引用。

そもそも(アメリカでは)「日本の権利書に相当するものは存在していない」のです。
まず日本語的に「権利」の意味に相当するものがアメリカの不動産ではTitle(タイトル)と呼ばれています。(略)不動産関連でTitle(タイトル)という言葉が出てきた場合、その意味はまず「権利」と考えていただいて間違いありません。アメリカの不動産で権利を表す単語はTitle(タイトル)です。

そこでこのTitle(タイトル)の持つ機能ですが、厳密には法的に2つの機能があります。それは

① その土地への権利もしくは所有権 ... その土地には細かくは5種類の法的権利があります。それらを束ねた権利を一括して有する権利のことをTitle(タイトル)という言葉で表現します。Title(タイトル)とは権利ですが更に厳密には5種類の法的効力のある権利、ということです。

② その権利もしくは所有権があることの証明 ... 前述の権利そのものは最大公約数的な、全てのTitle(タイトル)に共通する意味合いとなりますが、自分がアメリカで不動産を所有する場合はこちらの方がよりその意味合いは大切です。すなわち、「この土地に対する(厳密には5種類の)権利はこの人が有しています!」という所有権の証明としての機能があります。

つまり実際にこの不動産を所有しているのは誰なのかという調査をする必要があるわけだが、それをやるのがタイトルカンパニーと言われる会社。私たち苺畑夫婦が直面した問題はここ。

私たちの家は主人のミスター苺と私との共同名義になっていた。だから何をするにも二人が同意しなければ話は進まない。夫婦だからといってどちらか一方が勝手に家を売却するというわけにはいかないのだ。二人が仲良く一緒に住んでいて家の売却に同意している場合ならいいが、そうでないと話はややこしくなる。

うちは夫婦円満なので問題はないはずなのだが、ここで一つ問題が生じた。それは日本と違ってアメリカではすべての書類に直筆の署名が必要だ。そして不動産売買に必要とされる書類の数々は膨大!そのページごとにサインだのイニシャルだのをするので、健康な人でも手が疲れる。

ところがミスター苺は病気で手が震えて署名などできない。それで私は話が進まないうちに最初に不動産のエージェントに主人は右手が使えないので署名は無理。私が代理で主人の分も署名するので署名代理人となる手続きをしたいと言っておいた。

エージェントのセルマは「問題ありません。弁護士を紹介します」と言ってくれて、その日のうちに弁護士から連絡があった。普通代理委任状(Power of Attorny)とは、本人が何らかの事情でその場にいない場合に代理人が署名する権利を持つというもの。それで委任状には本人の署名が必要だ。しかしミスター苺は署名が全くできないため、そういう場合はバッテンマークを書いて二人の証人が署名することになっている。

お隣の旦那さんと息子さんが証人になってくれて委任状作成が完了した。セルマはその書類をもってタイトルカンパニーに提出し、何もかもうまく行ったかに見えた。

ところが数週間後にタイトルカンパニーから代理人の書類に書かれた主人の署名が署名に見えないとクレームがついた。いや、だからわざわざ二人の証人を立てたんじゃないかと弁護士から話をしてもらったのだがダメだという。何故署名できないのか医者の診断書をもらって来いというのだ。それで私は脳外科のお医者さんに手紙を書いてもらったが、手紙を書いたのが脳外科の医師で主人の病衣は脳の病気だと知ってタイトルカンパニーは完全に発狂(脳の病気だけに)。脳みそがやられているなら判断能力もないはずだ、こういう場合は法廷後継人でなければ受け付けないと言って来たのだ。

なぜタイトルカンパニーがここまでごねているのかというと、もしも主人がきちんと物事を理解してない場合、私の一存で家を売ってしまってから、主人の身内からクレームがつく可能性があるからだ。例えば主人には前の奥さんとの間に子供がいて、主人が亡くなった場合の財産は半分はそっちへいくことになってるとか、、

その話を弁護士にすると、後見人の手続きは最終的に法廷の判断で決まるためちょっとやそっとでは解決しない。早くて三か月遅くて一年以上かかると言われて完全に絶望した。

いや、この家を売るのが一年後になるというのは別にいい。ただ私たちはすでに引っ越し先のアパートを決めてしまっており、敷金も払って1年のリースにサインしてしまったのだ。もしこのまま家が一年も売れなかったら、私たちはアパートの家賃と家のローンの両方を一年間も払い続けなければならなくなる。これじゃあ家を売って得をするどころか大損である。

もうこの時点でオープンハウスを何回もやり、買い手からのオファーも出ていたので、このまま何か月も待つなんて無理。いったいどうしたらいいのだろうかと途方にくれていたら、エージェントのセルマが色々とコネを当たってくれて別のタイトルカンパニーと交渉してくれた。苺畑夫婦には子供がいないこと、夫婦の財産は夫婦だけのもので他の身内にクレームをつける権限がないことなどを説明してくれた。それでいくつかあたったタイトルカンパニーの一つが承諾してくれたのである。

というわけで一時はどうなることかと思ったが何とか無事解決。家を売ることができた。

教訓:今更遅いのだが、2020年にお医者から主人の運動機能の低下も考えて代理人委任状を作っておいた方がいいと言われていたのに、別にいいやと後回しにしておいたツケが回ってきた。やれることは即座にやった方がいい。後で何が起きるか解らないから。