苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

テキサス州の新しい中絶法に発狂する左翼たち

先日テキサスで新しい人工妊娠中絶を制限する法律がとおった。これは妊娠6週以降の中絶を禁止するもので、アメリカの左翼たちは発狂状態である。何故6週間なのかというと、その頃に胎児独自の鼓動が始まるからというのが理由だ。

アメリカで人口妊娠中絶が合法になったのは1973年のRoe vs. Wade訴訟で最高裁判所が中絶を認めたことから始まる。それまで中絶に関する法律はそれぞれの州でまちまちであった。今でも中絶が出来る時期がいつまでかという制限は州によって違う。

私がアメリカに来た当初、私にはこの中絶に関する討論の意味が良く理解できなかった。当時私はアメリカ人の友達に、「日本でも中絶は違法だが、例外が色々認められているため、事実上合法になっている。アメリカでも法律上は違法でも現実では合法にしておけば双方が納得するのでは?」と聞いたことがあるのだが、「いや、それはダメでしょ!」と言われてしまった。アメリカは法治国家である。違法行為をそう簡単に認めるわけにはいかないというのが理由。アメリカ人て結構融通が利かない国民だなとその時は思った。

人工中絶に対して非常に強い気持ちが起きるのは、アメリカがユダヤキリスト教の国だからだろう。

私個人としては中絶には賛成できない。ただ100%どんな場合でも中絶をすべきではないという考えではない。特に6週間という初期の場合であれば、胎児がまだ個の人間として成長していないという議論も理解できる。しかし、6週間は早すぎると議論している所謂プロチョイス(選択派)と呼ばれる中絶推進派は実は非常に不誠実な議論を繰り広げている。

6週間が早すぎるなら何週間ならいいのか?

6週間では妊娠に気付いていない人がほとんどなので、気が付いた時には時すでに遅しとなるからダメだと言う意見を聞いたが、たいていの妊婦は4週間から7週間の間に妊娠に気付くという。女性の生理サイクルは28日。6週間というと生理が二週間遅れるという状況だ。妊娠を望んでいる女性なら二週間も遅れたらすぐに気が付くだろう。問題は妊娠を望んでいない、特に若い子はもしや妊娠したかもと思っていても怖くて誰にも言えずに迷っているうちに6週間が過ぎてしまうということはあり得る。

しかし中絶推進派は、では何週目からの制限なら賛成するのかという質問には答えない。何故かと言えば彼らの本心は中絶は生まれるまでいつでも合法であるべき、いや酷い人になると生まれてからでも殺していいと考えている。だから6週間は早すぎると言いながら、同じ口で後期(7か月や8か月)中絶禁止にも反対するのだ。

じゃあ強姦や近親相姦の場合はどうなるのか?

この質問はよく聞く。プロライフと呼ばれる宗教保守の基本的な姿勢は母体に支障を来す場合以外の中絶を認めない。それで中絶推進派は「レイプや近親相姦」で妊娠した可哀そうな女の子にさえも中絶を認めないのかと迫る。だが、その質問に答える前に、ではそれらを例外にしたら中絶制限に賛成するのかという質問をしたい。無論中絶推進派の答えは否と決まっている。なぜなら、中絶推進派は反対派がいくら例外をつけて譲歩しても、どんな時でもどんな理由でも中絶可能という法律以外支持する気など毛頭ないからである。

安易に可能な中絶は女性を守らない

中絶というものが母体に与える身体的精神的な打撃や、胎児を殺す行為だということを安易に考えて、中絶が気楽にできる社会で得をするのは女性ではない。そういう法律で一番得をするのは未成年を虐待する大人の男や、女性の体をおもちゃにする無責任男たちだ。

性行為には妊娠はつきものだ。だから女性は相手をしっかり選ぶ必要がある。もしも妊娠した場合、この人と結婚し一緒に子供を育てられるかどうか慎重に考えなければならない。もしその気がなく、ただセックスを楽しみたいだけの相手との性交渉であるならば、避妊は必然である。

しかし中絶が簡単に出来るとなると、特に未成年の少女を食い物にする大人が、保護者面して少女を中絶クリニックに連れて行き、中絶を済ませたら、また虐待を繰り返すなどということが起こりかねない。いや、多分すでにそういうことは起きているだろう。

フェミニストはやたら中絶を支持する。フェミニストなら中絶を支持しなければならないとさえ思っている。だが、実際に中絶は一番無防備な少女たちにとって非常に危険な制度なのだということも考えるべきである。

この問題はすぐには解決しない。いや、解決策はないのかもしれない。結局その社会がどのくらい中絶を許容するかで法律は違ってくる。だからアメリカは州ごとにまちまちの法律があるのであり、州の権限は尊重されるべきなのだ。