苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

東洋人の祖先はアフリカの黒人だった?

最近東洋人の祖先はアフリカの黒人だったという説を唱える人が増えて来て、Xでアジア人の話を中心にしてる人にやたらにそういう資料を送り付けてくる人がいる。私もTikTokYouTubeでそういう動画をいくつか見たことがある。しかしこれはどう考えても馬鹿げている。

考古学的に言うと、確かに人類の祖先は皆アフリカから始まっている。現代人は皆アフリカ大陸から出た原始人の子孫である。

現代の人間の直接の先祖はホモサピエンスだが、まだ人間がホモサピエンスになる以前、現代人の祖先人類ホミニンが最初にアフリカから外へ出たのは1.7から1.85百万年前にとされていた。ただ80年代にジョージアでもっと古い人間の化石が発見された。中国やインドなどでは1.6百年前の人間の化石とともに、二百万年くらい前の道具の化石も発見されており、もしかすると最初の人類がアフリカを出たのは2.2百万年くらい前だったのではないかとさえ言われている。

人類とはいっても、これらの人びとは今の現代人とは同じではなく、身体も小さく脳みそも現代人の半分程度しかなかった。ただ道具を使って狩りをしていた形跡があった。

その後アフリカでは人類はずっと進化を続けたが、世界に広まった他の人類もそれぞれ独自の進化を遂げていたと考えることが出来る。7万年くらい前にやっとホモサピエンスという現代人の直接の祖先がアフリカを出る。もっともそれまでにも原始人はアフリカから出て世界中に散らばっており、アフリカの外に住んでいた他のホムニンであるネアンダルタール人と出会い混血も生まれていた。アフリカ以外の国の人類にのみネアンダルタール人のDNAが含まれているというのもそれが原因である。

さて、ここまで書けば私が何を言いたいのかお分かり頂けると思うのだが、確かに今の東洋に最初に訪れたホムニンはアフリカから来た人たちであるが、彼等は現代のアフリカ人とは同じではない。二百万年も前に東洋に訪れたホムニンはヒト科の別の動物なのである。同じ人間ですらないのだ。だから東洋に最初に訪れたのはアフリカ人だったのではなく、我々も現代のアフリカ黒人も同じ動物から進化したというだけの話である。しかも我々はアフリカから出なかったアフリカ人たちとは違う動物のDNAが含まれているのである。

これらの人びとは現代のホモサピエンスではなく、ホモサピエンスの前のホモエレクタスよりも古い人類であり、身体も小さく脳みそも現代人の半分くらいだった。

今、東洋人の祖先はアフリカ黒人だったなどと言っているひとたちは、東洋人の文化は元はといえば黒人のものだったと言いたいようだ。ユーチューブには中国には昔から黒人も住んでいたという動画を上げている人がいるが、それは中国は広い大陸であり色々な人種が入り混じっているということの証明でしかなく、中国の先住民がアフリカ黒人だったという証拠にはならない。中国は非常に大きな大陸であり多くの部族がいる。インドやカザフスタンやロシアやなどと国境を接している。だから伝統的な中国人の顔をしている人も居れば色も黒っぽいインド人のような人もいるし、アラブ系の顔のひともいるし、そうかと思えば色が白く碧目の人もいる。それは単に中国は広いと言うだけの話である。

だいたい中国の先住民がアフリカ黒人だったという人達の証拠というのが、19世紀に撮られた写真にアフリカ系黒人のような人が写っているということだけ。いったい中国がどれだけ古い国だと思ってるんだ。全く呆れかえる。

クレオパトラが黒人だったと言ったと思ったら、今度は中国人は黒人だったとか、本当に何を言ってるんだかわからない。どうしてアフリカの歴史からアフリカの文化や偉人を探してこないのだ?何故他人の文化を横取りしようとするのだ?

こういうのこそ本当の意味で文化盗用というのではないだろうか?

追記:11月19日

思ったのだが、こういうのって結局自分らには高度な文化がないと考えている人々の劣等感の裏返しなのではないだろうか?もし自分らの文化に誇りがあったなら、他人の文化を自分らのものだとか言い出さないはずだ。

例えばどこか日本のお隣の国が、やたらと日本の茶道や剣道や柔道はもともとそちらの国から生まれたんだとか言い張るのと同じで。日本は他国の文化も取り入れ日本なりにアレンジしてより良いものを作ると言うことを誇りに思っているから、自動車は日本で発明されたとか絶対に言わない。