苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

WOKEとは陰謀論なのか?

本日イーロン・マスク氏のトランスジェンダー息子の話を検索している途中に渡辺直弼|note氏のWokeは陰謀論だというノートを見つけたので読んでみたのだがのっけから大間違いで笑ってしまった。

この”woke"というのは数年前からアメリカの極右たちが多様しているスラングであり陰謀論です。

Wokeというのは元々AAVE(African-American Vernacular English)という黒人運動が"Stay Woke, Vote"といって1930年代に使ったのが最初で、今でも左翼が使っている左翼の政治スラングだ。2010年くらいから社会的不平等や人種差別や性差別やLGBT人権迫害などと立ち向かうために社会正義の一貫として左翼の間で使われるようになった言葉であり、2014年に始まったブラックライブスマター(BLM)運動でも左翼によって頻繁に使われて来た言葉である。

こうした背景を知らずに渡辺氏はこう続ける。

アメリカの極右達によると、ある日突然に人々が「(LGBTや有色人種などのマイノリティの人権意識や、環境問題の重要性などに)目覚める」現象が起きて、それまではそのような問題に無関心だった人が突然変わってしまう。これはウイルスやマインドコントロールのような陰謀だと、主張するわけです。

私は多分渡辺氏の言う極右翼だが、このwokeのことを昔から「お目覚め主義」と訳している。ご存じの通りwokeとはwakeの過去形で「目を覚まして起きていろ」という意味なら本来は"Stay awake"とするところをわざわざ文法的に間違った使い方をすることで、自分らは他人よりも世の中の不正について覚醒されているという意味で使われている。

極右翼がこの言葉を使い始めたのは左翼がこの言葉を使う度に世の中がよくなるどころか、おかしな方向へ進んでいることに気付いたからだ。LGBTにしろBLMにしろこれらのお目覚め主義のおかげで我々の社会はどんどん悪い方に進んでいる。だから我々はこうした左翼思想を彼ら自身の言葉であるwokeと呼んでおちょくっているのだ。

LGBTの当事者目線でいうと、LGBTの人々は、名前は色々変わるけどはるかな太古から存在していて昔から異性愛者の中に溶け込んで生きてきましたし、これからもそうなのだという感覚しかありませんし、他人から何かを吹き込まれて「ある日突然目覚めて」変わるようなものでもないでしょう。

 

「同性愛は罪だ」と毎日教えられて育った敬虔なクリスチャンでも、おとなになっていく中で徐々に「自分の性的指向/性同一性は他人と同じではない」と自覚するからLGBTは思想でもなんでもないとされてるわけです。むしろ、ある日突然LGBTという存在に気づいて熱烈なアンチに「目覚め」たのはどう考えてもアンチLGBTの皆様の方です。そもそも自分の子供がLGBTであると認めなくない、すなわちLGBTが嫌いだから、「自分の子供が悪い奴らに思想を吹き込まれている」などという妄想ができるわけです。そもそもLGBTに敵意がなければそのような妄想は出ません。

 

イーロン・マスクの子供にしても「父親が変な思想に目覚めた」とでも感じていることでしょう。

実際にある陰謀を指摘することは陰謀論とは言わない。渡辺氏はwokeがウイルスやマインドコントロールとする考えを妄想だと言い切るが、実際にこれらの思想が教育の場やメディアやインターネットで広められており、特にLGBTQ+思想は今や幼稚園から教えられている。

氏は故意に同性愛者(LGB)とトランスやクィアといったTQ+以降の思想をごっちゃにしており、あたかもマスク氏が息子がゲイであることをカムアウトされたのを拒絶して「お前とはもう親でも子でもない勘当だ出ていけ!」とでも言ったかのように書いているが、これは左翼特融の誤魔化し理論だ。

これは私の想像だがマスク氏は息子がゲイだったとしてもさほど気にしなかったことだろう。彼は息子がトランスで思春期ブロッカーを摂取しなければ死んでしまうと脅かされてブロッカー摂取を承諾してしまったくらいだから、最初から「LGBTが嫌いだから」という理屈は成り立たない。もしそう思っていたなら思春期ブロッカー投与に同意したはずはないからだ。

彼は息子が「トランス」し始めて、初めてトランスジェンダリズムと言う概念が如何に邪悪であるかを悟ったのだ。

アメリカの極右たちはこのような陰謀論を"woke"と呼び、「あいつはwokeだ」みたいに、仲間だけがわかるワードとして使用します。

繰り返すが"woke"という言葉を最初に使いだしたのは極左翼活動家であり右翼ではなく、この言葉が右翼の「仲間だけが解るワード」というのは無理がある。

渡辺氏は"woke"が悪い言葉だと言っておきながら、これは日本語風に言えば「意識高い系」という意味になり、「社会問題に意識が高い」ことの何が悪いのかと問いかける。いや、そう思うなら"woke"と言われて何が不満なのだろうか?

氏は極右翼は、意識高い系であることがあたかも悪いことであるかのように語り、問題解決から人々の目をそらそうとし、何かと反対意見を言う人を"woke"と呼んで議論を避けているという。

いや他人に変なラベルを張って相手を黙らせているのは渡辺氏のような極左翼の方だろう。人の性別が変えられると考えるトランスジェンダリズムなる概念を批判したり思春期ブロッカーは危険であると考えたり、女性施設は生得的女性のために守られるべきという人たちをすべてTERFだのトランスヘイターだのと言って黙らせてきたのは自分達のほうではないか。

もし渡辺氏が意識が高いこと(wokeであること)が悪いことだと思っていないなら、大の男たちが全裸で子供たちの見る前を歩き回るプライドパレードや、女性集会を暴力で阻止しようと現れた人々などを"woke"と呼ぶことに何の異議があるのだ?それは単にこれらの人びとは意識が高いと言ってるだけの話で、氏が言うようにこれが何の問題もない行為であるなら、それをwokeと呼んだからといって何の問題もないはずだ。林檎を林檎と呼んで何の問題もないのと同じだ。

渡辺氏はマスク氏が生きている我が子を死んだ者として扱ったことに関して「こんな虐待があるだろうか」と言っている。しかし親から授かった名前を"dead name(死んだ名前)"と言って捨てて、過去の自分を死んだものとする考えこそまさにトランスジェンダリズムではないか?トランスするということはそれまで生きて来た自分を亡き者にするということではないのか?だったら自分の息子は死んだのだというマスク氏の考えの何が虐待なのだ?

そして渡辺氏は息子を「殺した」のはトランスである息子を受け入れられないマスク氏自身だという。なんと残酷なことをいうのだろう。大切な息子をトランスジェンダリズムというカルト思想に奪われた父親によくこんな非情なことが言えるものだ。

前回もご紹介したように、イギリスでは思春期ブロッカーは害あって益なしの薬品であるという調査結果が出ており、ブロッカーを投与しないと子供が自殺を図るというのも全く事実に基づかない嘘であったことがはっきりした。

この嘘のせいでどれだけの若者たちが危険な薬品を投与され永久的に不可逆的な損傷を受けたかを考えると本当にwokeイズムがどれだけ危険なウイルスであるかが解る。私は子供の頃に思春期ブロッカーを受けたり若くしてホルモン治療をして乳房除去や去勢手術をしてしまった脱トランスの人たちの話を多く聞いた。もしも彼らが最初にジェンダークリニックに行った時に、いまのマスク氏のような父親が「断じていかん、トランスなど絶対にさせない」と頑張ってくれていたら、この子たちの人生はどんなふうだったろうか?

だからこそマスク氏はこの邪悪なwoke思想から子供たちを守るために戦うと宣言したのだ。

マスク氏の息子が不可逆的な去勢手術などしてしまう前に、彼がwoke思想から本当に目覚めてくれることを切に願うものなり。