苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

アメリカ、ユダヤ系民主党議員たちのジレンマ

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前回民主党下院議会が民主党のラシーダ・ティライブ議員を公式批判したと言う話をしたが、さきほど我が選挙区の代表民主党のアダム・シフ下院議員のスピーチを見かけて、あれ?となった。それというのもアダム・シフ議員はアメリカ国内や大学のキャンパスで起きている反ユダヤ運動にショックを受けているという話をしていたからである。アダム・シフと言えばドナルド・トランプの弾劾裁判を先導していた議員であり、マガ共和党支持者からしたら宿敵である。しかし今回ばかりは彼もイスラエルの正当防衛を支持している。もしかしてシフ(Schiff)議員はユダヤ系なのか?

それで私はSchiffという苗字はユダヤ系なのかどうか調べてみたところドイツやオーストリアに多い名前だが、ユダヤ系にも見られるということ。ドイツやオーストリアからアメリカに移住してきたユダヤ人はかなり多いので、シフ議員がユダヤ系でもおかしくはない。そこで思ったのがアメリカ議会にはどのくらいのユダヤ系がいるのだろうかということ。それで調べて観たところ、上下合わせて37人のユダヤ系がいる。上院に10人(100人中)下院に27人(435人中)。下院の27人中25人は民主党2人が共和党。上院の10人は全員民主党だ。アメリカ全体でユダヤ系は2%だがアメリカ議会では6%を占める。圧倒的に多いのは無論クリスチャンである。

アメリカはもともとイスラエルの強き同盟国である。民主党共和党イスラエルを同じように支持してきた。しかし昨今イスラエルを支持する保守派キリスト教徒が増え、どちらかというと共和党の方がイスラエルを支持するようになってきた。

10月13日に行われた世論調査As Israel-Hamas war continues, Americans remain supportive of Israel in new poll : NPR)によるとこの戦争でアメリカはイスラエルを支持すべきかという質問にすべきだと答えた共和党支持者は77%、民主党は69%、全体で65%のアメリカ人がイスラエル支持である。しかしこれがGENーZと呼ばれる20代前半の若者になってくると支持すべきが48%、なにもしなくていいが37%、イスラエルを批判すべきが12%となっている。

しかしモスリム有権者の数が増えるにつれ、彼等は圧倒的に民主党支持であることもあって、民主党としてはモスリムの票を失いたくはない。かといってラシーダ・ティライブやイルマ―・オマルのように、あからさまにイスラエル殲滅やユダヤ人虐殺を支持するような議員を放っておくわけにもいかない。すでに多くの民主党支持有権者の間からはバイデン政権は十分に激化するユダヤ人差別に真剣に取り組んでいないとしてかなり失望の声があがっている。このままでは民主党ユダヤ系の支持を失うことになる。

皮肉なことにモスリム有権者も実はバイデン政権には不満の声をあげている。それというのもバイデン政権はイスラエルを支持しており、イスラエルに軍事費用援助をすることを明らかにしているからだ。

ユダヤ系だからといって必ずしもイスラエル政府の方針を全面的に支持しているわけではない。アメリカのユダヤ系は非常にリベラルが多いので、イスラエルパレスチナに譲歩して二か国解決に努めるべきだと考えている人が多い。しかし今回のことでパレスチナパレスチナ支持者たちが平気で「川から海へ、パレスチナ解放へ」と叫ぶのを聞いて、大学構内でユダヤ人を追いかけまわす学生たちを見て、イスラエルパレスチナに平和共存はありうるのだろうかと疑問を持つ人々も増えたことだろう。そして自分らはガザの人びとに同情しているのに、パレスチナ支持者たちはイスラエルの犠牲者には全く同情を見せないどころか、それこそユダヤ人の民族浄化を本気で唱えていることに大きな衝撃を覚えている。

民主党はこんな憎悪に満ちた人々に党を乗っ取られていいのだろうか?ユダヤ民主党員は正念場である。