本日の映画紹介は
毎週火曜日はシニア割引で半額になるので叔母ちゃんと一緒によく映画を見に行くが、最近見た映画の中では良い映画だった。ポリコレ度ゼロ、お説教じみたメッセージもなく、しかも観客の知性をバカにしないきちんとした筋。アクションもあるがただただ撃ち合いだけのくだらない内容ではなく、きちんと話が進んでいく。
これは1995年にウィル・スミスとマーティン・ローレンス主演で始まったシリーズの最新版。この二人の掛け合いは息があっていて非常に自然だ。長年パートナーを組んでいる刑事コンビという役割だが、ずっと一緒に仕事をしているせいで時として夫婦のような会話になる。しかしそれはあくまでも男同士のパートナーの会話で無理がない。主人公は二人とも黒人なので家族も皆黒人だが、彼らが黒人であるということは特に強調されていない。つまり、この映画は黒人観客だけを対象にしたものではないということ。
無理のない多様性
この映画の登場人物の人種は多様だ。主役二人が黒人であるだけでなく、スミスの演じるマイク・ローリーの息子アーマンド(ジェイコブ・シピオ)はラテン系。マイクの上司はラテン系白人女性で彼女のフィアンセの司法長官も白人男性。マイクを助ける警官二人は白人男女。またマイクの息子に父親を殺された刑事を演じるのは白人女性。悪役も白人やラテン系や黒人や東洋人が入り混じっている。ゲイ男性の芸術家も出て来る。ただ私は観ている時はそういうことはあまり気にならなかった。それというのもこれらの配役がごく自然だからだ。
私の言う無理のある多様性というのは、時代や地域的に白人以外の人が出て来るのはおかしい状況で黒人や東洋人やラテン系が出て来ることだ。例えば中世のイギリス宮廷に黒人貴族がいるとか、日本の時代劇に黒人侍がでてくるとか(苦笑)。また現代の話でも出て来る男女カップルが必ず黒人と白人の異人種カップルだったり、登場人物の必ず一人はゲイのキャラクターだったりといった押し付けである。
この映画では主役のマイクの新妻クリスティーン(メラニー・リバード)もマーカスの妻テレサ(ターシャ・スミス)も普通に黒人女性。マーカスの娘婿のフレッチャー(ジョン・サリー)も黒人。普通に人は同じ人種同士で結婚する。無論例外はいくらでもあるが、映画の世界ではまるでそれが普通だという描写なので違和感があるのだ。
この映画にも異人種カップルに関する話が出て来るが、その扱いが非常に自然だ。マイクの息子がキューバ系の容貌であることを不思議に思った女性が、「ラテンの息子はどこから来たの?」という場面があり、黒人とラテン系のカップルはちょっと変という普通の感覚が表現されていて新鮮だった。
またゲイ男性の扱いも、画廊を経営している男性が何となくゲイっぽいというだけで押し付けがましくない。あるシーンで、マイクと相棒のマーカスが前触れもなく後輩刑事の自宅を訪れるが、慌てて出て来た若手男性刑事のドーン(アレキサンダー・ロドウィッグ)は上半身裸で明らかに取り込み中。「今はまずいですよ、警部」といってる彼の背後から下着姿であらわれるのはドーンの同僚女性刑事ケリー(バネッサ・へジェンス)。これが通常のポリコレ映画ならさしずめパンツ一丁の男性が出て来るところである。
観客の知性を侮辱しない筋
さて多様性の話はこのくらいにして肝心の筋。ここ最近見た映画フォールガイズやザ・ミニストリーオブアンジェントルマンリーワーフェアは同じアクション映画でも撃ち合いばかりで筋らしい筋がなく高予算のビデオゲームという感じだったのに対し、ライドオアダイにはきちんとした筋がある。無論アクション映画だからそれなりに撃ち合いシーンや格闘シーンもある。だが年齢的にスミスもローレンスも四十代の中年男性なので不自然なアクションはやらず、アクションシーンは若手のマイクの息子役シピオとマーカスの娘婿役のサリーが請け負う。
スミスとローレンスの魅力は派手なアクションではなくローレンスの惚けとスミスの突っ込みという息の合ったケミストリーだ。二人の会話はそれだけ聞いてても漫才みたいで面白い。
では遅まきながらあらすじ。
マイアミ市警のマイクとマーカスは、相変わらずそりが合わずにいた。ある日、彼らの亡き上司、ハワード警部に麻薬組織と関係があったという疑惑が浮上する。ふたりは上司の無実を証明するために捜査を始める。
マイクは麻薬組織のカーテルのメンバーだった息子アーマンドが何か知っているのではないかと話を聞きに行く。アーマンドはハワード署長を殺害した罪で受刑中。アーマンドはハワードが嵌められた事実を知っており、その黒幕の顔を見たことがあることを話す。何故かマイクがアーマンドと話したことが漏れ、アーマンドの身に危険が及ぶ。
マイクは新署長のリタに事情を話し、アーマンドを別の場所に移動させる許可を得る。アーマンドの移動を護衛することになったマイクとマーカスだが、輸送飛行機に護衛警官として乗り組んでいた数人が実はカーテルの工作員。飛行機はハイジャックされパイロットや護衛の警察官が殺されてしまう。犯人たちはパラシュートで脱出。残されたマイク、マーカス、アーマンドはなんとか飛行機を着陸させ生き延びるが、今度は二人がアーマンドを逃すためにハイジャックをしたとして濡れ衣を着せられ、警察とカルテルの両方から狙われるはめになる。
もちろん軽いノリのアクション映画なので複雑な筋ではないが、素直に楽しめる映画なのでお薦め。