苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

イギリスの欧州連盟(EU)離脱が意味するもの

先日イギリスは国民投票でEU離脱を決断。EU残留を強く押していたキャメロン首相は辞任に追い込まれた。何故イギリスはEUを離脱したがっていたのか、について非常に解りやすく説明してくれているのが谷本 真由美(たにもと・まゆみ)さんのブログ。NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。)さすがロンドン在住だけあってEUがイギリスに及ぼした悪影響について肌で感じる説明がされている。 何故離脱なのか? 彼女が説明しているイギリスのEU離脱原因についてちょっと箇条書きにしてみると。

  • EUは加盟国の間の経済格差が凄まじい
  • 豊かな国はお金を出すばかりで、貧乏な国に、補助金などの名目で吸い取られてしまいます。これはカツアゲと同じです。例えばスペインやギリシャの高速道路は、ドイツやイギリスが出したお金で作られています。しかし、そんなものを作っても、ドイツやイギリスには大した利益がありません。イギリス的には、貧乏なギリシャはそんなものはテメエで作れと思っています。

  • 地元の習慣や常識にそぐわない馬鹿げた法律
  • 例えばタンポンの消費税を決める法律、掃除機の吸引力がすごすぎてはいけない、ゴム手袋は洗剤を扱えなければならない、スーパーで売られるキュウリとバナナは曲がっていてはいけない、ミネラルウオーターのボトルには「脱水症状を防ぎます」と書いてはならない等です。

    「バナナが曲がっていてはいけない」という法律についてはイギリス発の色々なお笑い番組でおちょくられていて聞いたことがあったが、そういうことだったのか。まるで冗談みたいな話だが実際に施行しようとしたら大変だ。しかし谷本さんが挙げている問題点のなかで特に重大なのが移民の問題。

  • 貧乏国の人がイギリスに来てしまう
  • EUは域内の国籍を持った人なら、どの加盟国に住んでも働いてもいいですよ、ビザは要りませんよ、というルールを決めてしまいました。(略)

    これは先にあげたイギリスと他のEU加盟国との経済格差とイギリスの非常に気前のいい福祉制度とが重なって、他国の無教養で低技術な労働者が急激に大量にイギリスに流入し、イギリスのインフラや福祉が追いつかなくなってしまった。それでもイギリスに出稼ぎに来ている労働者はまだしもだが、単にイギリスの生活保護や医療や教育だけにあやかりたい寄生虫みたいな外国人も激増し、いまやイギリスは破綻状態。 それとこれは私は気がつかなかったのだが、イギリスはEU参加後突然増えたヨーロッパからの移民のせいで、EU以外の移民を極端に制限せざる終えなくなった。しかしEU内からの移民は低教養低技術の肉体労働者か福祉めあての浮浪者みたいな人間ばかりだからイギリスの産業を発展させるために必要な人材ではない。それに比べてEU以外の国からの移民は高教養高技術の有能な人が多いのに、彼らを受け入れることが出来なくなり、イギリスでは人はあふれるのに人材不足という不思議な状況が起きてしまった。 谷本さんは書いていないが、これに近年の難民問題が加わる。ドイツが率先してはじめたシリア難民大量受け入れ政策はイギリスも応じなければならない。EUの住民はEU加盟国内なら移動は自由にできる。だからギリシャで受け入れられた難民はEU合法住民ということになり何の審査もなくイギリスへの入国も可能という理屈である。難民とされるアラブ人やアフリカ人がフランスからイギリスへ渡る海峡出発点の港町カレイ市に殺到しているのはこれが原因。 イギリスは他のヨーロッパ諸国で起きているモスレム難民をめぐる多々の問題について十分に理解しているから、このままEUに残留すればヨーロッパ人の移民だけでなくテロリストまがいのアラブ人やアフリカ人まで大量に受け入れなければならなくなる現実を危惧したとしても当然だ。 EUは今後どうなるのか? 同じくロンドン在住の小林恭子さんのブログ(在英ジャーナリスト&メディア・アナリスト。)から拾ってみる。彼女は残留派とみたがどうなのだろう。

    本当の問題は・・・

     実は、EU自体の方向性が問題視されているのではないか?  EU域内の主要国なのに、シェンゲン協定に入らず、ユーロも導入せず、「鬼っ子」のような英国。英仏海峡で隔てられていることもあって、大陸にあるEU国を「外国」と見なす英国。欧州よりは米国や英連邦に親近感を持つ英国。  そんな英国をEUの外に出したら、ドイツの主導の下、EUはさらに統合を進めるだろう・・と思いきや、そうもいかないだろう。  アイルランドギリシャなど、ユーロ圏内で財政問題で苦しんだ国があった・ある。ドイツを中心としたEUのルールを厳格に進めれば、国家破たんの間際に押しやられる国が今後も出てくるかもしれない。何せ、それぞれの国の規模、財政状況に大きな開きがある。一律の規定ではカバーできない。みんなが幸せにはなれない。  すでに、シリアなどを中心にした国からやってくる難民・移民の流入に対し、ドイツが人道的な見地から100万人を受け入れたのに対し、旧東欧諸国などから反対の声が強まっている。  社会のリベラル度を測る、同性愛者の市民に対する意識も地域によって異なる。人権として受け止めるドイツ、フランス、オランダ、英国などと一部の東欧諸国では大きな差がある。  EUは今、方向性を問われる時期に来ているのかもしれない。  ドイツのショイブレ財務大臣の言葉が光る。もし英国が残留を選んだとしても、これを一つのきっかけとして、これまでのような深化・拡大路線を見直す必要があるのではないか、と発言(21日)しているのである。

    {シリア難民」受け入れ問題でEU諸国はかなり頭を抱えている。これをきっかけにEU離脱を言い出す国々が増えるのではないかと懸念されている。だいたいEUが最初から中央集権制度を取ったことが問題なのだ。アメリカのような連邦制度にしておけばかなり違ったはずである。もっともオバマ王はアメリカをヨーロッパ風の集権制度に変えようと必死だが。