苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

ハマスはUNRWAの賜物だ

本日イスラエルの元国会議員でありシオニズム及び外交や教育を専門とする学者であるエイナット・ウイルフ博士(Dr.Einat Wilf)によるUNRWAに関する演説を聞いた。非常に興味深い内容なのでご紹介したい。

ウイルフ博士の演説の主題はUNRWAは解体させるべきであり、それに代わるガザ民支援機関は必要ではないというもの。

先ず博士はUNRWAを理解するにあたりUNKRWAという機関について説明する。Kとはコリア・韓国のことである。この機関は一時的なものとして設立された朝鮮戦争直後の難民救済のための組織であった。韓国人難民の数はおよそ2百万人で当初のアラブ難民の三倍に及ぶ数だった。しかしこれらの難民は3年から4年の間に別の地に落ち着いた。かかった予算はUNRWAの当初の予算の三分の一だった。

UNRWAとUNKRWAの違いは、韓国難民が別の地へ移住したのにくらべ、今パレスチナ人と呼ばれるアラブ難民は別の国への移住を拒否したことだ。同時にイスラエルという国の存在を認めることも拒否した。それでUNRWAは最初からアラブ難民たちに乗っ取られてしまったのだ。

UNRWAは二国解決策に反対する組織として生まれた。それでアメリカやイギリスはUNRWAを解体しようと考えていた。UNRWAは難民を他所へ移住させるという当初の目的に失敗したことは明らかだったからだ。しかしこの時点でアラブ諸国が反対した。アラブ諸国にとってはUNRWAが存続する限り、イスラエルと言う国が独立した国であることに疑問符を打つことができたからである。

西洋諸国はアラブ諸国の要求を飲んだ。それというのもUNRWAを継続させることで特に困ったことはなく、アラブ諸国を大人しくさせられると考えたからだ。UNRWAには価値はないが少なくとも危害を及ぼすものではないと判断したわけだ。

しかし博士はUNRWAは大いに危害を及ぼたと語る。UNRWAは当初の目的に「帰還」という概念を加えた。つまりイスラエルと言う国は一時的なものであり、いずれアラブ難民はイスラエルの地に帰還することができるという概念だ。これこそがハマスUNRWAの賜物であるというゆえんである。

ミュンヘンでオリンピック選手たちを惨殺したテロリストたちはUNRWAの学校で教育を受けた難民の子供たちだった。UNRWAは無益だが危害は及ばさないという欧米諸国の考えは間違っていたのだ。UNRWAの教育により世代に次ぐ世代が、アラブ難民たちはイスラエルはアラブ人から国を盗んだ悪党国家であり、いずれ自分らはイスラエルの土地へ帰還することができると思い込むこととなってしまったのだ。

Overview image

Einat Wilf was born in Jerusalem and raised in a Labor Zionist family. She studied at the Hebrew University High School in Western Jerusalem.

UNRWAのいう難民とは普通国際社会で認められる難民ではない。彼等は「難民登録」をしている人々であり、4代も5代も前の祖先が難民キャンプで生まれたというだけの人びとである。

難民登録者の40%(4.8百万人)は現在もガザや西岸に住んでいるが、すでに別の土地へ移住した人もおり、40%の難民登録者はヨルダン市民である。ヨルダンに住むある難民登録者は豪邸に住んでおり湾岸で大儲けをした。ヨルダン市民の難民登録者は中流階級市民であり金持ち商人もいる。残る100万人はシリアやレバノンに住んでいる。すでに外国へ移住したなら難民とは言えないはずだと思うかもしれないが、UNRWAは一旦登録した難民を除名しないのだ。だからドイツに移住してドイツ国籍を得たひとですら難民登録名簿から削除されないのである。

例えば「私の大好きな難民登録者は」と皮肉っぽく博士は言う「億万長者のアメリカ市民であり、モデルのジジとベラ・ハディディの誇り高き父親です」なぜなら彼はシリアの難民キャンプで生まれアメリカに移住後も名簿から削除されていないからだ。博士によればハディディ氏は難民登録証明書を自分のインスタグラムで公表したという。

国連にはUNHCRという機関があり、世界中の難民の世話をしている。しかしUNHCRの規則では難民がよその国に移住し市民権を得た時点で難民ではなくなる。だから難民は一世代だけで二世目からは難民とはみなされない。難民の子孫を自動的に難民名簿に加えてしまうUNRWAとは大違いなのである。

しかし外国に住むほとんどの難民登録者はUNRWAから何の支援もうけていない。西岸に住む人々すらそうなのである。UNRWAが存在する目的は難民救済ではなく、常にイスラエルが独立国であるかどうかに疑問符を与えることにある。

UNRWAの目的は二つある。教育や健康はその一部ではない。彼等の目的は終わりのない難民問題を継続することである。

1)独立国としてのイスラエルに常に疑問符をあたえること。最終目的はイスラエルを殲滅しアラブ人がイスラエルの土地に「帰還」すること。

2)第二の目的は10月7日に明らかになったように、イスラエルに拘束されているテロリストたちを解放させること。そして解放されたテロリストたちによって、イスラエルが失くなるまでイスラエルとの紛争を継続すること。

博士はUNRWAの目的は二つと言っているが、結局のところ、彼等の目的はイスラエル国を失きものにしてアラブ人がイスラエルの土地を奪い返すことにあるということだ。

私(カカシ)から言わせると、彼等にはこの二つの意思すらないと思う。この二つはパレスチナ過激派に向けた表向きの目的であり本当の目的は利権だろう。

興味深いのはイスラエルこそがUNRWAの最強のロビーイストだという。トランプ大統領が一時的にアメリカによるUNRWA支援を停止した時、イスラエル政府はドイツ政府に支援金を増やすように嘆願したという。イスラエル政府はUNRWAがある限りパレスチナ人はおとなしくしてくれると考えたからなのかもしれない。しかし博士は、イスラエルUNRWAハマスよりましだという考えを変えなければならないという。UNRWAの職員はヨーロッパから派遣された国際社会が思うような国連従業員ではないのだ。彼等はガザで生まれガザで育ちパレスチナ解放を目指している過激派なのである。

博士は今回のイスラエルによるガザ侵攻でも明らかになったように、ガザ民は巨大なトンネル建築をするだけの技術を持っている。支援などしなくても十分に立派なインフラを作り出すことが出来る能力のある人々であることが証明されたと語る。

UNRWA学校はパレスチナ人によるパレスチナのための学校だ。イスラエルに帰還し復讐せよと教えているだけの害あって益なしである。「UNRWAは存在すべきではない。イスラエルがこの機関から得られるものは何もない。」と博士は結論付ける。