苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

映画「サウンドオブフリーダム」南米18か国で第一位の大ヒット

子どもの人身売買を描いた独立映画サウンドオブフリーダムが中南米で公開され18か国で第一位の興行成績を上げている。('Sound of Freedom' Nabs No. 1 Slot in 18 Latin American Countries - Hollywood in Toto)これは全く驚くべきことではない。もともと映画そのものが娘と息子を誘拐されたハンドラスの父親の話から始まり、舞台はほとんどコロンビア及び中南米で繰り広げられ台詞の半分はスペイン語だ。中南米の観衆にとって、これは身につまされる話でもある。

アメリカで今年の7月初期に公開されたフリーダム、、は2か月間ずっと勢いが収まることを知らず、9月も半ばになってようやくその勢いを失い上部10位からはずれたが、その売上総額1億8千万ドルに達した。低予算の独立映画としては前代未聞の成功だ。高予算のバービーとオッペンハイマーを除けば、この夏最大の話題作と言っていいだろう。

同映画は中南米以外でも売り上げは上々で、ニュージーランドで1位、オーストラリアとサウスアフリカで2位、イギリスで4位という好成績だ。まだアジアでは公開されていないようだが、早く日本でも公開して欲しい。

これほど成功している映画であるにもかかわらず、アメリカの主流映画界はこの映画を完全無視。いやそれどころか陰謀論だのなんだのとこき下ろし、映画製作に出費した何千という個人献金者のなかの一人が子どもの誘拐に関わったなどとデマを広めた。実際には離婚調停中の父親が前妻と子供の親権を巡って争っていただけ。

アメリカのラテン系は他の人種に比べて映画好きが多い。観衆の率からいくと常に他の人種を上回るんだそうだ。だとしたらアメリカ映画はもっとラテン系が活躍する映画を作るべき、と思うのは浅はかな考え。ラテン系が主役だからと言ってラテン系が好むとは限らない。

ドミニカン移民を素材にしたミュージカル、インザハイツは5.5百万の製作費を大幅に下回る4.5百万の売り上げと言う不入り、プエルトリコ移民素材のウエストサイドストーリーは1億ドルの製作費なのに売り上げはたったの1.4百万ドル。メキシコ人家族主役のスーパーヒーローものブルービートルは1.2億ドルの売り上げで製作費の1億ドルをなんとか上回ったが広告費だのなんだのを差し引いたら多分赤字だろう。

これと比較するとスーパーマリオブラザースは9千万ドルの製作費でなんと売り上げ10億ドルというからどれだけの大ヒットだったかが解るというもの。

というわけなので、ラテン系の観衆を惹きつけたいからといって、ラテン系を主役にしてみても、内容がおもしろくなければ誰も観ない。観客はそれほど自分らの属性の俳優を見たいとは思っていない。ラテン系女優を起用した白雪姫も主役女優のイメージが悪すぎて公開前から評判が悪いことこの上ない。巷ではこれ以上ディズニーの名を汚さないように劇場公開は諦めてストリームだけにするのではないかという噂である。

日本では人身売買の話があまり取沙汰されることがなく、どれほど深刻であるかを知らない人が多いようだ。出来れば日本の観客にもサウンドオブフリーダムを観てもらって、この問題の深刻さを知って欲しい。日本公開が近くなったらまたこのお話をしよう。