苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

東洋人に向かって「あなた中国人?」と聞くのは必ずしも差別ではない

私はアメリカ生活四十余年なので(しつこい!)もちろん「あなたどこから来たの?」とか「国籍はどこ?」なんて質問はよくされる。「あなた中国人?」と聞かれることも度々ある。30年以上前に住んでいたマンションには70代や80代の白人のご隠居さん達が多く住んでいて、みんな私には優しかったし親しくしてくれてたが、何度訂正しても私のことをThat Chinese girl (ザットチャイニーズガール・あの中国人の女の子)と呼び続けた。日本で言ったら昭和一桁世代にとって東洋人とチャイニーズは同義語だったのだ。

先日アメリカ上院議会の公聴会でトム・コットン議員(共和アーカーソン代表)がtiktokティックトックの代表取締役のShou Zi Chew(周受资)氏の国籍に関して「あなたは中国人か?」という質問を何度もしたことが、東洋人だからと中国人だと決めつける人種差別だという批判が高まっている。こちらがその典型的な意見。やりとりは日本語字幕があるので観ていただきたい。

この切り抜き映像だけを観て前後の文脈を理解しなければ、ブランドン・K・ヒル氏がいうように「無知なステレオタイプ」な質問だと勘違いされる読者もおられるかもしれないが、実はこの質問には理由がある。

先ずこの公聴会はなんのためのものだったのかということを理解しなければならない。これはTikTokを含めMeta, X, SnapやDiscord, Facebookといったソーシャルメディアが子どもに悪影響を与えているのではないかという前提で開かれたもので、各メディアの代表者たちが招かれて質問を受けたのである。トム・コットン議員はもともとTikTokには非常に批判的な立場であり、アメリカでは使用禁止にすべきだとすら言っている人だ。そしてその理由というのが中国共産党にある。

聡明なる読者諸氏はご存じかもしれないが、TikTokは元々中国のソフトウエアで、使用者が自分で撮影した短いビデオをアップして共有できるアプリである。TikTokは中国本土ではDouyin(抖音)と呼ばれており中国資本のバイトダンス(ByteDance)が所有している。いまやTikTokの人気は世界中で2兆個の携帯機器にダウンロードされており、その影響力は(特に子供や青少年の間で)すさまじいものである。「ユーザーデータが中国政府に収集される可能性があるという国家安全保障上の懸念や子どもたちの安全のために、いくつかの国がTikTokの使用を制限、禁止、または禁止しようとしている」とウィキにはある。

実はトランプ大統領の時代にTikTokの使用を禁止しようという動きがあったのだ。これはアメリカ市民の情報が中国共産党(CCP)に筒抜けになっているという懸念だけでなく、CCPはTikTokアルゴリズムを使ってプロパガンダを流しているという懸念があるからなのだ。例えば最近やたらと若い人たちの間で親パレスチナやオサマ・ビンラデンの手紙崇拝などの思想が広まっているのも、TikTokの影響が非常に大きい。CCPが反イスラエルで親パレスチナなのは先日もお話した通り。

つまりこういう背景がある以上、アメリカのTikTokCEOが中国共産党員かどうかという質問は非常に正当なものなのである。無論トム・コットン議員のような知識の高い人が公聴会に招いた人の略歴を把握していないはずはない。現に彼は周氏の妻子がアメリカ国籍であることを知っていたのだ。だからこの質問は周氏が中国人かどうかを知るためのものではなく、彼がCCPとどういう関係にあるかを知るための質問だったのだ。コットン議員はこの一連の質問について、「(周氏)自身が、彼の会社のように、中国共産党の影響下にあるかどうかを追及するのは、まったく妥当なことだ」と述べている。

こういう正当な理由があったにも関わらず、先のヒル氏のようにこれを人種差別問題にすり替えるのは非常に悪質だ。特に我々東洋人は東洋人だというだけで皆同じだと思われることに日頃から少なからぬ不満を持っている。その感情を悪用されて人種差別だなんだと言う煽りに乗ってはいけない。

出身地を聞くのは差別なのか

関連した話で、先日Xで最近日本に帰化したばかりのアンちゃんというアメリカ人女性が近所のご老人から「どこから来たのか」と聞かれて差別だと騒いでいるのを目にした。実はこれ、アメリカでも少数民族に対して出身地を聞くのは差別だと言い張る人達が多いので、アンちゃんさんも典型的アメリカリベラルだなと思わざる負えない。せっかく日本に帰化したのに、こういう下らないアメリカ思想を持ち込まないでほしいね、全く。

アメリカには移民が多い。それで出身地や民族は全く知らない人同士の会話のきっかけになる。言葉にアクセントがあり少数民族だったら出身地に興味を示されても不思議はない。聞いている人に他意はないのだ。もちろん少数民族だからといって移民とは限らない。二世三世になればすでにアメリカ人だ。だから「どこから来たの?」と聞かれたら「ロサンゼルス」と答えればいい。それでも「いや、だから元々はどこ?」としつこく聞かれたら「生まれも育ちの葛飾柴又、、、」冗談冗談。

相手が何を聞いているのかははっきりしてるのだから、「両親は日本からの移民だけど、私は生まれも育ちもロサンゼルス。日本のことは何も知らないし、日本語も話せない」くらいペラペラしゃべっても別にいいと思う。相手は単に話題のきっかけを探したいだけなのだ。そして反対に「あなたの出身はどこ?」と聞けばいいのだ。

アンちゃんさんも「どこから来たの」と聞かれたら、「アメリカ出身ですが、最近帰化して日本人になりました」と答えていれば質問した方も「へえ、すごいね」となって面白い会話が交わせたと思うのだが。

追記:Xでヒル氏のポストについてるリプライを読んでいたら、皆さん結構まともなことをおっしゃているので、コメント欄に貼っておく。

こちらコメント欄にあったジェニファー・ゼングという女性のポストに貼られていた写真。

TikTokの周受资が中国共産党員じゃないって?じゃ、CCP旗の横で座ってる男は誰なのよ?もちろんCCPは頭いいから「シンガポールのビジネスマン」をCEOにしてこういう質問から逃れようとしてるのよ。