苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

サウンドオブホープ、ポッサムトロットの物語り

先日サウンドオブホープ、ポッサムトロットの物語りのプロデューサーとデイリーワイヤーの話をちょっと書いたが、本日はその映画の内容について書こう。この話はテキサスのポッサムトロットという村で実際に起きた話である。

ジョシュア・ウェイゲル監督。ジョシュアと夫人のレベッカ・ヴァイゲルの共同脚本。

thecatholicspirit.com

あらすじ:

1990年代半ば、テキサス州東部にあるバプテスト教会の教区民が驚くべきことを成し遂げた: 77人の子どもたちを養子にすることで、この地域の里親制度を一時的に空にすることに成功したのだ。彼らの物語は、感動的なドラマ『サウンド・オブ・ホープ:ポッサム・トロットの物語』(エンジェル社)で語られている。


コミュニティのリーダーであるW.C.マーティン牧師(デミトリアス・グロッセ)の妻ドナ・マーティン(ニカ・キング)は、母の死によって悲しみに暮れ、祈るような気持ちで慰めを探していた。夫婦にはすでに2人の子供(ケイシー・J・ブラッドリーとタージ・ジョンソン)がおり、そのうちの1人は出生時に脳に障害を負っていたため、W.C.は当初その考えに反対していた。

 

しかし、一旦彼を説得すると、牧師は真の信者となり、できるだけ多くの家族に弱い立場の若者を引き取ってもらうための活動を率先する。地元のソーシャルワーカーであるスーザン・ラムジーエリザベス・ミッチェル)と協力し、マーチン夫妻と信徒たちは、新しい子供たちに愛情をもって永住できる家庭を提供しようと努める。

 

前回もちょっと触れたが、主役がマーティン牧師とその夫人(ファーストレディー)であることから物語全般に強いキリスト教の信心の精神が貫かれている。映画はマーティン牧師の教会でのお説教から始まる。お説教といってもアメリカ南部の黒人バプティスト教会。我々が考えるような静粛なお説教ではない。マーティン牧師のお説教はまるでミュージカルのよう。そしてゴスペルでは定番のドラム、ピアノ、ギターというバンド付き。この映画はミュージカルではないが、映画を通じてマーティン牧師及び妻のドナ、そして教会メンバー達による合唱が入る。嬉しい時も悲しい時も、メンバー達は歌いながら祈りをささげる。

ブルースブラザースやシスターアクトのゴスペル合唱を思い出してもらえれば解ると思う。

この数百人しかいない田舎の村人たちが77人もの子供たちを養子にしたというのは美談ではあるが、だからといて簡単に出来たわけではない。特に彼らは乳児を養子にしたのではなく、両親に虐待されたり育児放棄されたりしてきた子供達であり、色々とトラウマを抱えた子供達で、年齢も小さい子は4~5歳、大きい子では14~5歳の子供たちだ。特にマーティン夫妻が養子にしたテリーという14歳(?)の少女は非常な問題児でそれまでにも里親を転々とし、どこの家でもうまく行かずに児相も手を焼いていた。

マーティン家に来てからもテリーはマーティン家を限界まで追い詰める。実の父親から性的虐待を受け売春までさせられた過去のあるテリーはちょっと優しくされたくらいで大人を信用したりはしない。一年以上もマーティン家で暮らしながらテリーは全く夫妻にも妹にも心を許さず問題行為を繰り返す。

マーティン家が抱えた問題は養子の子供たちの教育だけではない。村全体が決して豊かなわけではなく、国からの支援もそう多くはない。牧師はプライドを飲み込んでメガチャーチと呼ばれる大規模な教会に金の無心に行ったりする。

しかしポッサムトロットの村人たちに希望があるのは、毎週行われるマーティン牧師のお説教で、村人全員が同じように苦労していると痛みを分かち合うことだ。どんなに大変な苦労に面していても、自分は一人ではない、みんな一緒だ、と思えることはどれほど力強く感じるだろうか。そして彼らの揺るぎなき宗教心が支えであることはいうまでもない。

最初から最後までお説教なので、ちょっと煩い感じがしないでもない。しかしこの人たちにとってこのお説教がいかに大事であるかを理解するうえで、これは必要だろう。