苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

お爺ちゃん日記㉒ 2024年9月

9月1日

朝食:お爺ちゃん、パンもう一枚食べな。「要らない」ほんと?お腹すいちゃうよ。「いらない」 昼食:お爺ちゃんお昼食べな。「いらない」ほんと? 夕方:「お代わり」は?もう三杯目だよ。「朝から何もくわせてもらってない」それはだれのせいですか!

9月2日

今朝6時にお爺ちゃんが歩き回る音で目が覚めた。どした、トイレ?「ふむ」結局昨夜はどこで寝たのかは不明。

気が付いたらもう10時を過ぎてるのでお爺ちゃんを寝かしつけようかと思ったのだが、お爺ちゃんはスタートレックの映画に見入っている。別にそれなら夜更かししたっていいか。早起きしてやることがあるわけじゃないし、朝は私も寝坊したいもんな。 Big Lizard's wife(カカシ姐さん)

9月3日

日が暮れてやっと気温が下がったので散歩に出た。夜なので人通りの多い繁華街を歩いたのだが、一軒韓国系のカウンターだけの居酒屋風のお店を見つけた。すごく混んでたが若者ばっかりだった。お爺ちゃんが入りたいと駄々をこねたが、我々は完全に場違い。

近所に自称カツサンドKatsusandoのお店が出来たので、凄く期待して行ったのだが、不味かった、、しかも高い。ただのカツサンドとフライドポテトで16ドル。一応試しに一つだけにしといてよかった。結局全部お爺ちゃんにあげた。 

9月4日

 お爺ちゃん「つんつん」アップルパイに触っちゃダメ、まだ熱いんだから。お夕飯食べてからね「ふむ」お爺ちゃんお夕飯もう食べないの?お腹一杯?「ふむ」じゃパイは食べないね。「食う!」デザートは別腹だもんね。お爺ちゃんパイを二切れ食べた。 

9月5日

お爺ちゃん、いつまでも食卓に座ってないで居間でテレビでも観たら?そこに居られると片付かないよ。「朝飯を待っとる」あ~また始まったよ。じゃあ支度するからできるまでテレビ見ててくれる?「ふむそうじゃな」これでお昼まで待たせよう。 

9月6日

最近気が付いたこと。冷凍食品や出来合いの食品を出すとお爺ちゃんはあんまり食べない。私が作った中華や日本食は沢山食べるので東洋料理が好きなのかなと思ったらそうじゃなくて、メキシカンでもイタリアンでも私がちゃんと最初から作った料理だと沢山食べるということが判明。面倒くさい人だなあ。

私の料理が上手とか自慢したかったわけじゃないのですが😅。お爺ちゃんには何故か冷凍や既製品だとばれるんですよ。私の手料理に慣れてるせいかな?

「そわそわ~」なに?トイレ?「いや、そうとも限らんNot necesarily」そうとも限らないってどういう意味よ。行きたいの?行きたくないの?「ふむ、状況によるThat depends」うっせえわ!早くトイレ行け!変な時だけ理屈っぽくなるお爺ちゃんであった。

昔のトップギアで列車と車で日本列島を競争するエピソードをお爺ちゃんが観ていた。綺麗だね、行きたいね。「どこじゃ」日本だよ。「日本て何処じゃ」私の祖国だよ。「そうか」と考え込む。「祖国って何じゃ?」

ぐずるお爺ちゃんをトイレに行かせて寝室に誘導。メラトニンのグミを食べさせておとなしくなる。午後11時25分、寝室を覗くとお爺ちゃんが居ない!あれ~と思ったら真っ暗なリビングのカウチで座ったまま寝てた。ま、いっか。今夜はそこで寝な。 

9月7日

友達と長電話していてお爺ちゃんのことをすっかり忘れていた。テレビの音はしているが、なんか静かだなと思って居間にいくとソファに寝そべってグースカ寝ていた。ま、いっか。無理に起こすよりそこで寝ててもらった方が助かる。  

お爺ちゃん「痛い」とお腹を抱える。どした?トイレ?「違う」なんか変なもん食べた?グレープとアボカドとベーグルだけだよね。「痛い」ふ~む、困ったね。 

9月9日

パイ食べなよ。「嫌じゃ」あなたが食べたいというから買ったんでしょ。おいしいよ、食べな。「嫌じゃ」お腹空いてないの?「要らない!」お口あーん「むぐ!」美味しい?「おいしい」食べな「ふむ」お皿の上に何が乗っているのかが解らなくなってるようだ。 

味見した後、お爺ちゃんはパイをちゃんと食べた。そりゃそうだ。好きなんだから。認知症患者が食べたくないという時は必ずしも空腹ではないと言う意味じゃないらしい。お皿の色などをかえて食品と皿のコントラストを付けるのも大事らしい。 

9月13日

お爺ちゃんのアボカド好きは変わらないが、前は大好きだったリンゴを食べたがらなくなった。小さく切れば少しは食べるけど、昔のような八つ切りではだめ。大昔はリンゴを丸かじりしてて、家でリンゴを切らせたことはなかったんだけどなあ。

9月17日

お爺ちゃんが朝食に手をつけない。洋ナシおいしいよ、アボカド好きでしょ?「どうやって食べろと言うんじゃ!」手でつまめばいいじゃん。いつもやってるでしょ。「食べれん!」フォーク使う?「ふむ」フォークあげたらちゃんと食べた。なんなんだこれは。 

9月18日

夜9時半、いつものようにお爺ちゃんを寝かしつける。10時に台所の片付けを済ませてお爺ちゃんの寝室を覗くとお爺ちゃんが居ない!そしたらお爺ちゃんは居間のソファでグースカ寝てる。そんなに居間が好きなら、もうそこで暮らせば? 

9月19日

お爺ちゃん「おお、カカシ、久しぶりじゃな」は?ずっとうちに居るよ。「いや、姿が見えんかった」別の部屋にいただけだよ。「そうか」最近目の前に立ってないと見失う傾向がある。

お爺ちゃん、トイレ行く?前に行ってから2時間以上経ってるよ。「ふむ、行っておくかな」今日は素直だな。 

お爺ちゃん、もう寝な。今夜は居間のソファで寝ないでちゃんとベッドで寝てよね。お爺ちゃんがそこにいると私がテレビ見れないんだから。 

9月20日

お薦めにアラジンが上がって来たからてっきりディズニーのアラジンだと思って観たら出演が全員日本人だったので、まずいこれは日本語のプロダクションなのかと焦った。そしたらミュージカルじゃなくてバレエでお爺ちゃんがすっごい魅了されててずっと凝視してた。お爺ちゃんバレエ好きだったんだあ。

私はバレエ苦手なのだがこれは非常にいいプロダクションだった。お爺ちゃんが感動していてカーテンコールになったら一緒にお辞儀してた。あなたが踊ったんじゃないのよ。

9月21日

男女共用の個室トイレがなくて仕方なくお爺ちゃんに付き添って誰もいないのを見計らって男子トイレに何回か入っているが、男性が後から入って来たとき男性はとても嫌な顔をするよ。当たり前だけど。男性だって女性とトイレを共用したいと思ってない。そう思うのは変態だけだ。

@meow_meow923 ·

 最後の一文🤣🤣🤣朝から笑い過ぎてお腹痛い🤣🤣🤣

9月22日

朝6時起床。朝ごはんの支度をしてお爺ちゃんをトイレに行かせ薬を飲ませて朝ごはん。むせたのでインヘイラーを吸わせ鼻スプレーを使う。一口づつゆっくり食べること一時間。歯を磨かせた後またトイレに行かせてやっと居間に座らせる。台所とトイレの掃除が終わったらもう11時。お昼の支度をする時間。

9月23日

六時起床。あれ~お爺ちゃん、なんで居間のソファで寝てるの?何時からそこ居るの?「しらん」トイレに行こう。「行こう」お爺ちゃん下着替える前にシャワー浴びようね。「やだ」やだじゃない、バスタブ入って。「やじゃ~」お風呂がいやな3歳児みたいだな。

お爺ちゃん一々抵抗しないでよ!おとなしくしてて私が水浸しになっちゃうよ。「眼が滲みる~」髪洗ってるんだから眼を閉じてよ!お爺ちゃん暴れないでよ!はいはい終わったよ。バスルームが水浸しだけど。 

お爺ちゃんをお風呂に入れて足の爪切って服着せて、水浸しの風呂場を拭いて台所に戻ってくるまで一時間。やっと一息ついたら、まだコーヒーを飲んでなかったことに気づいた。お早うございます。今日も一日頑張ろう!

アマプラでスタートレックのドキュメンタリーのシリーズをやってた。三時間も爆観してしまったので続きは明日にしようと思ったらお爺ちゃんがまだ観ると頑張る。そうだ、お爺ちゃんはスタートレックの仕事をしてたことがあるんだよね。お爺ちゃんの案がエピソードに採用されたこともあったんだっけ。

ドキュメンタリーのなかで脚本家がどれだけ虐げられたかという話が出てくるのだが、いつになくお爺ちゃんが熱のこもった様子で「そうじゃ、そうじゃ!」と怒ってるんだよね。お爺ちゃんの書いた案は採用されたのにクレジットもらえなかったことが何回もあったんだよ。 

スタートレックは番組のほかにファン向けにスタトレ小説を発行してた。お爺ちゃんはそれを何冊も書いてた。いいアイデアが多かったのでスタジオでピッチと言ってエピソードを提案するわけ。でも「いやあ、それはちょっと」と拒否されたアイデアが使われたことがあったとお爺ちゃんは昔文句いってた。 

9月24日

私が自室で保守派のポッドキャストを聴いていると、お爺ちゃんが入ってきてPCの前で「そうじゃ!そうじゃ!」と興奮してる。何ってるか解ってんの?「わからん」ただ私が観てるので一緒に観たかっただけみたい。

認知症患者に健康食を食べさせようとしてる自分が悪いと気づく。好きなスイーツをたべて何が悪い?さっそくマリーカレンダーのダッチアップルパイを買って来た。お夕飯はアップルパイだよ。

9月25日

お爺ちゃん出かけるから靴履いて。「どこじゃ?」手にもってるやつ。ちゃんと履いて。靴をもったままうろうろ。手で持ってるだけじゃだめなの!

お爺ちゃんは昨日の朝食の後、お昼も夕飯も手をつけなかった。それで今朝はさぞかしお腹がすいているだろうと思ったが全く食べようとしない。無理やり口に食べ物を突っ込んだら吐き出して大騒ぎ。でもアイスクリームは食べた。 Big Lizard's wife(カカシ姐さん) 

結局お爺ちゃんが今日食べたのはアップルパイ一切れとストロベリーショートケーキのアイスクリームだけ。ま、いっか。

9月26日

お爺ちゃん、着替えよう。「嫌じゃ!」朝ごはん食べな「嫌じゃ!」薬飲んで「嫌じゃ~!」なんで今日はそんなにききわけないの?「お前はわしを追い出そうとしている!」昨日あんまりぐずっていたのでホームに送るよと言ったのを根に持ってるな。ご飯食べたことも忘れる癖に変なことは覚えてるな。

またまた朝ごはんを食べないと言い張るので、居間に座らせスタートレックディスカバリーをかける。テレビに夢中になっている間にTVトレイに朝食を乗せて置いておいた。スタトレ観てる間にパイもアボカドも消えていた。

お爺ちゃんによるハンガーストライキはBJのステーキランチのせいで難なく終わりを告げた。でも毎回外食なんかしないからね、食べたくないなら食べなくていいよ。

9月27日

お爺ちゃん、朝ごはん食べないんなら勝手に飢えろ!私はジムへ行く!一時間後帰宅するとしょんぼり食卓に座っているお爺ちゃん。お腹空いた?ホットドッグでも食べる?「食べる」ホットドッグふたつあっという間に食べた。もう無理やり食べさせずにお腹すくまで待つしかないな。

9月28日

今月のエントリーを読み返してみて思ったのだが、お爺ちゃんは最近食べなくなった。今までは朝食はベーグルと果物と決まっており、何も言わなくても食べていたのに、最近は「食べな」と食事の最中に時々促さないと途中で手を止めてしまう。ここ2~3日は朝食に全く手を付けない。本日などは今までなら熟してもいないのに待ちきれずに食べようとしていたアボカドを剥いて出してあげても食べようとしない。

以前にもあったことなのだが、お爺ちゃんはそれまで凄く好きだったものを突然食べなくなる。1年前までは朝はシリアルと果物が定番でスーパーに行く度にお気に入りのシリアルを買っていたのに、ある日突然シリアルは嫌いだと言い出した。ピスタシオナッツやオリオクッキーやリンゴなども大好きだったのに、ある日突然食べなくなった。お夕飯もトウモロコシがないと機嫌が悪かったのに、昨晩は手を付けなかった。一時期特定の銘柄じゃないと駄目だといって、スーパーをいくつも探し回ったこともあるサンドイッチ用のハムも、今は全く興味を失くしてしまった。

お爺ちゃんが食べると思って買いだめしてしまったものが戸棚に置きっぱなしになり、結局捨ててしまったことも一度や二度ではない。

問題なのはこういうことが徐々に起きるのではなく突然起きるということなのだ。だからその時になってみないとお爺ちゃんの気まぐれがどうなるのか全く予測がつかないのだ。

食べろと言っても食べないのでサンドイッチなどを作っておいてお爺ちゃんのお気に入りのソファの前のTVトレーの上に乗せて置く。お腹がすいたらいずれたべるだろうと思ってそうしているのだが、食べる時と食べない時がある。

食べたくないなら無理に食べさせなくてもいいのかなと思うようになっている。