日本にいると、ハリウッドの暴力映画や時々ある大量乱射事件などのニュースから、アメリカはひどい暴力社会だという印象を受ける。そして単純にアメリカには銃が多いから犯罪も多いのだという結論をつけがちだ。反銃所持派は銃砲規制の厳しい北隣のカナダの低い犯罪率と比べて、ほれみろ、カナダは銃規制があるから平和じゃないか、アメリカの犯罪率はすべて銃法が緩和なせいだ、とやりだす。だが、本当に銃規制が低犯罪率に結びつくというのであれば、カナダと同じく銃規制の厳しい南隣のメキシコの犯罪率を無視するのは片手落ちである。一般市民による銃所持を完全禁止しているメキシコの犯罪率はアメリカの二倍だ。いや、それをいうなら、中南米諸国の犯罪率はアメリカとは文字通り桁違いの高さなのである。
この間もちょっと触れたが、2010年現在のアメリカの殺人率(銃犯罪に限らない)は人口10万人あたり4.8件で、日本の0.83件の5.7倍である。日本よりアメリカは殺人率は高い。ちなみに2011年現在のカナダの殺人率は1.73件。殺人率が低い国を並べてみると、、、
アメリカ 4.8 カナダ 1.73 日本 0.83 ドイツ 0.81 ノルウエー 0.68
確かにこの数字だけをみていると、銃規制の厳しい日本やカナダに比べ、アメリカの殺人率はかなり高い。だが、同じアメリカ大陸でも中南米の方に目を向けてみる(2011年現在)と、、
ホンドラス 82 エルサルバドル 66 ベネズエラ 49 ベリース 41 ガテマラ 41 バハマ 28 ブラジル 22 プエルトリコ 26 メキシコ 18
これをみると南方の近隣諸国がいかに危険な国であるかがわかる。特にメキシコは最近麻薬戦争のせいで、テキサスとの国境沿いの都市では10万人あたりの殺人事件数が300件を超えるところもある。 アメリカでもほぼ無視されたので、日本では多分あまり取り沙汰されたなかっただろうが、2011年7月、メキシコシティーのナイトクラブで大乱射があり、20人が殺害された事件があった。
メキシコ市(CNN) 国営メキシコ通信は9日、同国北部モンテレイ市のバーで8日深夜、武装集団による銃の乱射事件が発生、20人が死亡したと報じた。5人が負傷し、病院に運ばれた。 治安当局者は、初期段階の捜査結果を踏まえ、ナイトクラブの支配権をめぐる組織犯罪グループ間の抗争が背景にあるとの見方を示した。同クラブでは麻薬が売買されているという。武装集団は車2台に分乗してバーに乗り込み、銃を乱射していた。死亡者の大半はナイトクラブの従業員だった。
しかも後になって、犯人たちが使ったAR-15s(米国産M−16の前進型アサルトライフル)は、アメリカの法務省の麻薬対策「迅速克つ猛烈作戦」の失態によりアメリカ政府からメキシコの麻薬暴力団の手に渡ってしまった武器だったことが明らかになっている。ちなみにメキシコでは一般市民の銃所持は完全禁止である。
アメリカの銃規制強化をとなえる連中は、全米ライフル協会のラビエール副会長の演説を「狂ってるとしかいいようがない」などと批判する前に、実際に銃規制の厳しい国々の犯罪状況をきちんと見極めて把握してから話してほしいものだ。