苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

なんでいつもユダヤ人ってことになるんだろう?

明日胃の検診があるんで、今日は一日断食しているカカシである。まだ朝9時なのにお腹すいたなあ。月曜日を検診の日にしたのは前日に色々用意することがあったからで、断食もそのひとつなのだが、仕事しながらでは出来ないこともあるからである。ま、そんなことはどうでもいいのだが、本日は外出も不可能なのでネットサーフを色々していたら、ヨーロッパの移民問題とかフェミニズムなどで、結構意見が合うブログを見つけた。黒木頼景( くろき よりかげ )という人が書いている「無敵の太陽」というサイト。 アメリカの保守派とはなんぞやという興味深い記事に惹かれて読んでみたのだが、どうもこの人反ユダヤ偏見丸出しで、何の話をしていても最後には「ユダヤ人の陰謀」ってな話に収まってしまうのである。ヨーロッパの移民問題ユダヤ人の陰謀、フェミニズムユダヤ人の陰謀、米保守派の分裂もネオコンユダヤ人)の陰謀、ハリウッドはユダヤ人に牛耳られてる~! 他のことでは完全にまともなことを言っているひとが、どうして最後にはユダヤ人の陰謀とかって話になってしまうのか、私には不思議でしょうがない。 元々ユダヤ民族はどこの国でも嫌われる存在にあった。歴史的にそういう運命を背負った民族なのだ。近年欧米では多文化主義などでユダヤ人差別はよくないということで表向きはユダヤ差別はあまりなかった。特に第二次世界大戦ナチスドイツによるユダヤ人虐待がひどかったことから、ナチスと一緒にされたくない欧州の人々はあからさまなユダヤ人差別は避けてきた。 しかし最近になって、イスラム教圏の勢力が旺盛になってくると、反ユダヤ感情をあからさまに出す人が多くなってきた。イスラエルパレスチナの問題では国連は常にアラブ人の味方をしイスラエルを一方的に悪者扱いする。主流メディアの報道も、パレスチナから何千と飛んでくるスカッドミサイルの応戦をしているだけのイスラエルに対して過剰防衛だと批判する。最近頻発しているアラブ人が包丁振り回してユダヤ人を殺している事件にしたって、悪いのはユダヤ人といわんばかりの報道。挙句の果てにユダヤ教の神殿テンプルマウントは元々アラブ人のものだったなどと言い出す始末。 私が怖いなと思うのは、今ヨーロッパで起きている反移民運動がモスレム移民を追い出すのと同時に、その嫌悪感が何世代もヨーロッパに居住し完全に融和しているユダヤ教徒にも向けられるのではないかということだ。ユダヤ人は反移民運動に協力してモスレム移民を追い出したいかもしれないが、17世紀にもヨーロッパに侵攻したアラブ人を地元民と一緒に追い出した直後にヨーロッパから追放された歴史を持つユダヤ民族。今回も同じようなことが起きる可能性は大である。特に黒木のようにヨーロッパの行きすぎな移民受け入れ政策はユダヤ人の陰謀だなどと言い出す人間が居たのではイスラム排斥と同時にユダヤ排斥につながるのは自然な成り行きだ。 ところでアメリカの保守派のなかでネオコンサーバティブ(新保守)と呼ばれる人たちが居るが、ネオコンユダヤ系と位置づける人が多いのはちょっといただけない。ネオコンというのは元々リベラルで民主党支持だった人たちが、1980年代、ロナルド・レーガン大統領の思想に感化されて共和党支持に変わった人たちを指した。無論現在のネオコンはすでにレーガン世代ではないから、そういう定義には当てはまらない人も多い。ミスター苺に言わせると、ネオコンは感情的にはリベラルだが結論的に保守に収まる人と定義している。理屈で保守的思想に収まる人々との違いはこの思考過程にあるというのがミスター苺の見解。 黒木はアメリカとイスラエルの同盟についてかなり批判的である。湾岸戦争イラク・アフガン戦争もユダヤロビーの陰謀であるかのような言い方だ。孤立主義の米保守派にはそういうことを言う人が多いのは事実。だが、イスラエルにかこつけて、単なる自分らのユダヤ人種差別意識を正当化する口実に使う人が多いのも事実。 皮肉なことに超リベラルや左翼の間でのユダヤ人嫌いは全く普通。オバマ大統領はじめ、民主党大統領候補のひとりヒラリー・クリントンユダヤ人嫌いは悪名高い。 だからユダヤ人は保守派からも左翼リベラルからも嫌われるといういつもながらのシナリオになるわけ。反モスレム運動をくりかえしているパメラ・ゲラーが嫌われるのも彼女が反モスレムだからというだけでなく、彼女がばりばりのユダヤ系だからといってもまるで差し支えないだろう。 カカシは大昔からユダヤ人嫌いの人種差別には大きな疑問を持っていた。我が父などもイスラエルユダヤ人が捨てた国で、何世紀も経ってからアラブ人から奪い取ったりするから問題が起きるのだ、などとアラブ人が広めた嘘八百を信じ込んでいた。にも関わらず、私がユダヤ嫌いにならなかったのは元々私が人種差別が嫌いだったのと、私が10代のときに起きたミュンヘンオリンピックでのモスレムテロリストによるイスラエル選手たちの惨殺事件。ユダヤ嫌いなオリンピック協議会は一日も競技を休まず、まるで何事もなかったかのようにオリンピックは進められた。惨殺されたイスラエル選手たちへの黙祷すらなかった。あの時私はいかに世界中がイスラエルユダヤ民族を忌み嫌っているかを知り、ものすごい憤りを覚えた。同時に世界を敵に回しても堂々と独立国を作ったユダヤ民族に尊敬の念も抱いた。カカシのユダヤ民族びいきはここから始まる。 アメリカとイスラエルの同盟は世界平和には欠かせない条件だと私は信じている。モスレム台頭の世界に住むくらいなら、ユダヤ人が牛耳る世界に生きたほうがよっぽども平和である。だが、私はユダヤ人の陰謀などという説は全く信じていない。 ところでミスター苺がユダヤ系なのは拙ブログの読者諸君ならもうご存知だろうが、ミスター苺は全然敬虔なユダヤ教徒ではない。単にユダヤ民族の家系に生まれたというだけの話。ユダヤ人が世界の金融市場を牛耳っているというのが本当なら、俺にもそのおこぼれを頂戴したい、と彼は常に言っている。