先日も、アメリカのあちこちの市で黒人や有色人種(people of color略してPOC)に優先的に経済援助をするプログラムが繰り広げられているという話をした。カリフォルニアやニューヨークの郡や市では基本的収入保証というプログラムを通じて黒人及び有色人種に補償金を支払おうという地方政治家が出てきている。カリフォルニアのマリン郡では黒人及び茶人(主にラテン系)のシングルマザーのうちから125世帯に向こう2年間月1000ドルづつ支給すると発表した。フォックスニュースはこれを「基本収入として補償金を払う」と表現している。
アメリカで補償金(reparations)と言った場合には、黒人奴隷子孫への慰謝料のことをさす。補償金というのは、過去の過ちを償うために加害者が被害者に払うものだ。それをカリフォルニアのマリン郡の住民が税金を通じて一部の黒人にその支払いをするというのはおかしくないか?これはどう見ても憲法違反である。
昔から黒人市民団体での過激な人権屋は、黒人奴隷の子孫に過去の奴隷制度を償うためにアメリカ政府が補償金をはらうべきだと言ってきた。アメリカ政府が特定の人々に補償金を払った例はある。第二次世界大戦中に財産を没収され収容所に入れられた日系人に対して、1980年代にアメリカ政府は一人当たり2万ドルの補償金を支払った。だから黒人にも同じように補償金を支払うべきだというのである。だが、これはどう考えても現実的ではない。
まず、財産を没収されて収容所に送られた日系人に関しては詳細な記録が残されている。1980年代にはまだ生存者もおおく残っていたこともあり、直接被害にあった当人やその子供たちを特定し補償金を支払うことが出来た。だが黒人奴隷の子孫となるとそうはいかない。
だいたい祖先が奴隷だったからといって、何世代も後の子孫が補償金をもらう権利があるという理屈が私には全く理解できないが、十歩譲ってそんな権利があったとしても奴隷制度が終わって140年あまり。その後に移住してきた人も多くおり混血も多いため、アフリカ系の血筋というだけでは奴隷の子孫かどうかもはっきりしない。つまり奴隷子孫の確定など不可能だということだ。
受け取る資格のある人が特定できないのにどうやって補償金を払うのかといえば、今回のように貧困層の黒人シングルマザーなどということになるわけだ。彼女たちが実際に奴隷の子孫かどうかなどどうでもいい。黒人は奴隷制度のせいでずっと人種差別などで虐げられてきたから国民の税金で補償金をもらう権利があるという理屈である。黒人差別に全く加担してこなかった他の市民が何故血税を払って彼女たちに補償金を払う義務があるのか、などということは民主党政治家らには興味がない。
また、ほかの人種をさしおいて、黒人だけが個人的に補償金を受け取るのは人種差別だという批判から免れるために、地元の黒人市民団体に予算を振り分け、地元黒人救済のために使うなどというプログラムを作っているところもある。結局これは特定の団体に税金を横流しし、地元政治家がその見返りをもらうという汚いやり口であり、貧困層の黒人救済などということにはならないのだ。
人種差別は誰が誰に対してやってもいけないことだ。過去の悪を現在の悪で消すことは出来ない。それは復讐になるかもしれないが、そんなことをしても差別はなくならないどころか、かえって白人や非黒人による黒人への敵意を増長させるだけである。