苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

カナダでLGBTQ+への支持が減っているわけ

拙ブログでも先日Ipsosが行った世論調査で、欧米で一般市民のLGBTQ+への支持が減っているという話をしたが、その同じ調査結果についてカナダのフェミニストのメーガン・マーフィー(Meghan Murphy)が「なぜカナダではLGBT人権への支持が減っているのか」という記事で私と同じようなことを書いているので読んでみる。

結論としてマーフィーはトランス活動家の横暴ぶりが同性愛者の権利を乗っ取ってしまったというもの。

欧米では往々にして同性愛者への理解も進み彼らを差別せず平等に扱うという風潮は普通になってきた。特にカナダでは同性婚への支持も高く、同性愛者であることは恥ずべき行為ではなく、誇り(プライド)をもって祝福すべきものだと考える人も増えた。先日のイプソスの世論調査でもカナダでは、まだ同性結婚同性カップルによる養子などへの支持は高い。しかし人々のトランスジェンダーへの感情には異変が見えて来た。

同性愛者人権運動は考えてみれば常識だ。同性同士が結婚したいと思うのも自然であり、同性愛者だからという理由で暴力の被害に遭ってはならないなど当たり前のことだろう。

しかしトランスジェンダリズムはLGB運動とは似て非なるものがある。LGB運動で味を占めた活動家達は今度はトランスジェンダーをとりあげて同じような運動を始めた。しかし同性愛人権とトランスジェンダリズムは根本的に違う。そして彼らの横暴なやり方はLGBの延長というよりLGB運動を破壊する方へと進んでしまった。

女装したい男や女性の枠にはまった生き方の嫌いな女性達はすでにカナダでは平等の権利を持っていた。トランス活動家たちが欲しがったのは平等ではなく特権だ。彼らが求めているのはトランスの安全や人権ではなく、カルトのような揺るぎない献身だ。

人びとは許容は支持できる。しかし何かあるごとに、例えば学校やスポーツやビールの缶にいたるまで、非常識なトランスイデオロギーを押し付けられるのはいい加減嫌になる。人々がトランスイデオロギーに疲弊するにつけ、LGBへの支持も一緒に減っていった。

前回私(カカシ)も書いたようにイプソスの世論調査によれば、2021年をピークにして欧米のLGBT全体への支持率が減っている。

イプソスの世論調査によると、「スポーツチームにおけるオープンにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルの選手」に対する支持は、2021年から11%減少した。回答者の3分の1が「映画やドラマにもっとLGBTQ2のキャラクターを登場させたい」と答え、2021年から10%減少した。「性的指向性自認をオープンにする」ことを支持するカナダ人は49%にとどまった。

アニー・オハナというトランス活動家はこれについて積極的なLGBTQ+への攻撃があるせいだと語る。しかし彼女(?)が言っている攻撃とは至極当然で常識的なものだ。例えば子供に性別は変えられるという教育をすべきではないとか、男が少女の更衣室にはいるべきではないとか、女子スポーツに男子が参加すべきではないとかいうものだ。人びとは何故ドラアグクィーンが子どもに本を読みきかせなければならないのか理解できない。

オハナのような人間が理解していないのは、実際ヘイトが起きていないにもかかわらずヘイト活動が起きているという主張はもう効き目が失くなってきているということだ。

カナダ人にはTが虐げられたりしているどころか、ことあるごとに持ち上げられていることに気付いている。企業や政治家やメディアや学校など。親たちは特にトランスがいじめられているどころか奨励されていることに気付いている。女性のCEOやスポーツ選手の地位が女性になりたがる男たちによって剥奪されていることは本物の女性たちにとって異質であり侮辱である。

カナダ人たちは自分らが信じていない宗教を政府やメディアや組織によって押し付けられることにいい加減嫌気がさしている。そして徐々に抵抗し始めているのだ。

マーフィーはオンラインでもだんだんと多くの人たちが声を上げるようになっていると語る。そしてこれまでトランスジェンダリズムに批判的な集会に参加するのを控えていた人たちも、最近はどんどん積極的に集まってくるようになった。人々は自分の意見を言うことを怖がらなくなり、かえって自分らの意見に誇りを持つようにすらなった。

ソーシャルメディアでも「トランス女性は女性」という発言に多くの反論のリプライが付くようになった。これまで世界中の人たちから「いったいカナダはどうなっているの」と聞かれていたが、最近はカナダ人達も永い眠りから目が覚めて来たようだ。

かつては「親切にするbe nice」ために礼儀として許容してきたかもしれないことが、もう弊害のない同情とは思えなくなってきた。これは「さもないと、、」という脅迫に聞こえるようになったのだ。誰もいじめっ子は好きじゃない。どれほどの色とりどりの旗をひらめかせようと。

カナダにおいてトランスジェンダリズムの力が弱っているのは、マーフィーのようなフェミニストが激しい迫害にも負けずに声を上げて来たことが貢献している。彼女は男は女ではないと常識的なことを言ったせいで社会的にも実際に暴力的に迫害されてきた。フェミニストの「男は女ではない」という言論を弾圧するトランスジェンダー活動家たちにツイッターも加担 (hatenablog.com)(2018年12月1日)にもかかわらず黙らなかった。

トランスジェンダリズムの力が弱まっているのはカナダだけではない。イギリスでもアメリカでもその傾向は顕著に表れている。

先日Xで女性の演説集会に抗議に現れたトランス活動家たちの写真が掲載されたが、去年何百人解いた抗議者たちが、今年は十数人だったのが印象的だ。

また俳優のデイビッド・テナントがイギリスのLGBT授賞式で女子施設に男子を受け入れるべきではないという運動をしている国会議員が居なくなればいいと発言したことで、これまでのような無条件な称賛ではなく、かなりの批判を浴びている。

テナントは当の女性議員からだけでなく、JKローリング女史からも批判を受けており、多くの人がJKRに同意している。テナントにはノンバイナリーを自称する息子がおり、ドレスを着た写真をテナント夫妻のソーシャルメディアに上げたりしてお目覚め主義をアピールしているが、これも批判の対象となっている。人によってはテナントはこの発言によって自分の俳優としてのキャリアを傷つけたのではないかとさえ言われている。

もう盲目的にトランスジェンダリズムを支持することは社会的に有益なことではなくなってきているのではないだろうか。