先日ピーナッツというリスが連邦政府の衛生局に捕らえられて安楽死させらたことを巡ってソーシャルメディアで人々の怒りを買っている。
ニューヨーク在住のマーク・ロンゴさんは7年前に交通事故で親を亡くした野生の子リスを保護。怪我をしていたので治療をし、健康を回復した時点で一旦野生に返そうとしたがすぐに骨折して戻ってきてしまったため、野生に戻すことは諦めペットとしてずっと飼っていた。ロンゴさんがピーナッツと名付けたリスと一緒に撮った動画をインスタグラムやティックトックにあげるとピーナッツは瞬く間に大人気。百万を超えるフォロワーができた。
ところが11月2日突然、州の環境保全省(DEC)の職員15人がロンゴさんの自宅におしかけてきて家宅捜査をしたうえにリスのピーナッツと家にいたアライグマのフレッドを連れて行ってしまった。職員によれば近隣住民から危険な違法ペットを飼っている人がいると通告があったとのことだった。
州の法律によると野生動物をペットにする際には特別の許可証が必要である。ロンゴはピーナッツを教育用動物として認められる手続きを取っている最中だったという。
没収されたリスとアライグマは狂犬病の疑いがあるとして金曜日に安楽死させたとDECは発表した。
これについて多くの人たちが政府の横暴なやり方に腹を立てているが、それを「なにをたかがリス一匹で騒ぐんだ」と言っている人がいる。それを言うならたかがリス一匹のために十数人のエージェントを差し向け、飼い主をまるで麻薬取引の犯罪者でもあるかのように扱い、家宅捜査をして一緒にいたアライグマまで連れて行ってしまったという政府のやり方にこそ注目すべきである。
もしリスに狂犬病の疑いがあるというなら、潜伏期間の2週間ほど隔離して症状が出なければ開放とすればよかったはず。そして違法ペットを飼っているロンゴに対して許可証の申請をさせるとか罰金払わせるとか方法があったはず。
これが大型動物の虎とか熊とかなら話は別。どれだけ慣れていても猛獣は何をするかわからない。飼っていた虎や熊やチンパンジーに飼い主や隣人が殺された例はいくらもあるので、きちんとした檻などがない自宅で飼うのが違法なのは当然だ。しかしそういう場合でも州が取り取り上げた猛獣がすぐさま安楽死されるなんてことはない。猛獣用の保護施設に入れられるだけである。
保護施設といえばロンゴさんはピーナッツの動画で集まった資金を使って奥さんと一緒に怪我をした野生動物の保護施設を作って運営している。動物の扱いには十分に慣れているロンゴさんからリスを取り上げる必要性は全くなかったのだ。
ところで危険な違法ペットが居ると通告したのは隣人ではなく、ピーナッツの人気に嫉妬したインスタグラマーの若い女性だったそうだ。私は彼女が通報したこと自体にはあまり怒りを感じていない。なぜならピーナッツの動画は何年も大人気だったのだから誰かから通報がなくても当局がどうにかしたいと思っていたならいつでもできたはずだからである。それに通報者の女性は自分のフェイスブックで自慢げに通報したことを発表してしまい、多くのネット民の怒りを買い、今や自分のソーシャルメディアのアカウントを全部削除してしまったそうなので、完全に裏目に出てしまった。
それにしても皮肉なのはニューヨークには何万という違法移民が町中をうろついているというのに、それらは完全放置しておいて「違法」ペットを連行するのに15人もエージェントを送り出したことだ。犯罪犯し放題の違法移民はほったらかしでたかがリス一匹のためにこれだけの資源を使えるというのはどういうことなんだ?まるでニューヨーク州は一般州民を弾圧することを違法移民取り締まりより優先させてしまっているようだ。
===
余談だが、私の前の家の裏庭にコヨーテ夫婦が住み着いてしまったときに市の衛生局に駆除をお願いしたが、市はそういうサービスは提供していないので自分で殺してくれれば死体は引き取りに行くと言われた。コヨーテは中型犬くらいある獰猛な野生動物である。そんなものを私ら夫婦で殺せるわけないだろと思ったが、もし私たちがコヨーテをペットにしていたら違法ペットということで捕獲に来てくれたんだろうか、などと思ってしまった。
ちなみにコヨーテはジャングルのようになっていた裏庭を庭師に頼んで更地にしてもらっている最中に音に驚いたのか飛び出してきたと庭師のアミーゴが言っていた。幸いにしてコヨーテたちは怖がって逃げただけで庭師のおっちゃんに襲いかかったりはしなかったので助かった。庭がきれいになってからはコヨーテたちは戻ってこなかった。