苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

マット・ウォルシのDEIをおちょくった映画"Am I Racist"の批評を色々聞いてみた

先日ご紹介したDEIの偽善を暴く映画、"Am I racist?" 「僕ってレイシストなの?」 - 苺畑より In the Strawberry Fieldsが非常な人気で今年公開されたドキュメンタリーとしては最高の売り上げをあげている。

マット・ウォルシュの新作映画「僕ってレイシストなの?」は、興行収入2週目の週末に900万ドルの大台に乗り、2024年のドキュメンタリー映画の最高興行収入を記録しました。 この映画は、多様性、公平性、包括性がいかに「洗脳」スキームになっているかを示すモキュメンタリーで、公開2週目の週末に83館追加され、1,600館で250万ドル以上の興行収入を記録した。ウォルシュは『X』でこの映画の成功を祝い、現在では制作予算の3倍の興行収入を上げていると指摘した。

ロッテントマトRotten Tomatoの観客評価ポップコーンミーターは1000人+で97%。映画評論家は11人でトマトミーターは73%とかなりの好評価である。大手の映画製作会社の作品ではない独立スタジオの成績としては快挙ともいえる出来である。いや、マット・ウォルシ並びにデイリーワイヤーおめでとう。

ところで批評した映画評論家の数がたったの11人と少ないのには理由がある。それというのも、この映画が保守派メディアのデイリーワイヤー制作であるということと、内容が人種差別に関するものであるということから左翼リベラルの名の知れた評論家たちは触りたくないからだ。ちょっと有名なユーチューブの映画評論家が別に高評価を出したわけでもないのに映画を観たというだけで炎上し、かなり叩かれているのをみてもそれがわかる。

しかしマットに言わせると、大手新聞や雑誌の評論家たちがこの映画に触れたくないのは内容が保守的であるということよりも、ハリウッド映画ではないと言うことの方が大きな要因ではないかという。ハリウッドは常に市場を独占していたいので、ハリウッド以外の独立スタジオの映画を評論することによって映画に正規のものであるという価値を与えてしまうのが嫌なのではないかというのだ。

しかし主流メディアが如何に無視しようとも、実際人気のある映画をネット界隈が無視することはできない。良い批評にしろ悪い批評にしろ話題の映画を取り上げないと言う手はない。それでユーチューブでは色々な人による批評が上がっているのでいくつか観て見た。特にマットを毛嫌いしている左翼リベラルたちの反応には興味があったのでいくつか観て見た。正直これはキツかった。

先ずはお馴染みのデッドドメイン(Dead Domainhttps://youtu.be/9xqCETaTwaQ?si=jf4Gyd_OsjkNdLlV。彼はマットが大嫌いな超リベラルなトランス女性自認の男である。お馴染みと言ったのは、彼は昔からマット・ウォルシに執着しており、マットに関するなが~いビデオをいくつかポストしているからである。

この映画はドキュメンタリー仕立てでマット・ウォルシがDEIについて学ぶという設定で色々なセミナーに参加したり専門家にインタビューしたりする形式になっている。しかしデッドドメインはマットがジャーナリストとしてきちんと取材をするのではなく、反人種差別ついて突き詰めた話を専門家やセミナーから真剣に学ぼうとしていないと文句を言う。しかもマットはDEI専門家であると嘘をついて人々を騙していると批判。

これについてワレン・スミス(Warren Smith)という哲学者が「この映画は人種差別に関する映画というより、人種差別という言葉の定義がどのように書き換えられたかを暴露する映画なのではないか」と語っている。

これはマット自身が言っていたのだが、マットはコメディー映画を作りたかったのであり、真面目なドキュメンタリーを目指したわけではない。マットはジャーナリストのふりすらしていない。彼の目的はいかにDEI専門家と言われるひとたちが反人種差別を掲げて金儲けをしているいかさま師かを暴露することだった。

デッドドメインはマットのDEI専門家という肩書は偽物だというが、それは正しくない。マットはちゃんとお金を払って数時間のセミナーを受けその後にDEI専門家としての証書を受け取ったのである。そんないい加減な証書が発行されていると言うこと自体がしゃれにならない現実なのだ。

デッドドメインはマットは演技が下手だし映画はコメディーとしても全く面白くないし、ともかくマットは才能がないとこき下ろしている。特にMAGAの帽子を被った白人二人組に襲われたと自作自演のヘイトクライムを訴えた黒人俳優ジェシー・スモレットの事件を再現したシーンはあまりにもひどくて眼も当てられないと語った。そして最後にマット・ウォルシが人種差別者かどうかという質問の答えは「イエス」だと言って締めくくった。

デッドドメイン以外にも映画に批判的な批評動画をいくつか観たが、偶然なのか何なのか批評家は全員が白人。言ってることはデッドとあまり変わらず、結論としてマット・ウォルシは人種差別者だで終わっていた。

*カカシ注:昨晩これを書いているときに大事な点を書き忘れていた。そもそもDEIの根底には白人は生まれながらにして人種差別者なのであるという主張がある。これは本人がそう意識していようといまいと免れない事実なのである。ということは、この定義に従うならば、プラチナブロンドでマットよりずっと色白のデッドドメインなどは究極のレイシストであるということになる。そしてマットを差別者だと言ったすべての白人批評家もレイシストなのである。

これらの白人批評家たちがマットはレイシストだと言い張るので、黒人の批評家たちは同意するだろうかと思い、黒人批評家の批評を探していたら結構あった。そしてこれらの黒人批評家がみんな口を揃えてこの映画は"hilarious"と表現した。この言葉の意味は「非常に可笑しい」と言った意味。

黒人男性のVeral Riotは「笑いが止まらなかった、これは真実だ、これが実際におきていることなんだ」と語った。しかもデッドドメインが特に酷かったと言っていたジェシー・スモレット事件のマットによる再現は今年みたコメディー映画のなかで最高に可笑しいシーンだった。一緒に観てた客たちも転げまわって大笑いしていたと語っている。

Center for bibical unityのMonique Dusonという黒人女性はほぼ99%の場面で笑い続けた"hilarious"だったと語った。ただ人種差別はあるということは認めるべきだったのではないかと語った。一緒に話をしていた白人女性は、DEIを信じている人が見たらいい気はしなかっただろうし、途中で出ていってしまったかもしれないと語っていた。

Film Phylosophieという黒人男性のチャンネルでは、DEIは映画界では死につつあると語った。彼自身時代劇で不自然に黒人を登場させるとか、もともと白人の役を黒人にやらせるとかには反対だと語る。黒人の話を描きたいなら独自の黒人を主役にした映画をつくればいいという。

不思議なことに私が観た数人の黒人批評家たちは誰一人としてマットは人種差別者だと言わなかった。

というわけで今回はマット・ウォルシの”Am I Racist”の批評をいくつか取り上げてみた。