苺畑より In the Strawberry Fields

苺畑カカシと申します。在米四十余年の帰化人です。

アメリカの介護施設状況をちょっと

本日私とお爺ちゃんはお爺ちゃんの親友P爺さんの介護施設を訪ねた。P爺さんはお爺ちゃんとは大学時代からの無二の親友。P爺さんはお爺ちゃんと違って頭ははっきりしているが身体の自由が利かないので24時間体制の看護婦と医師が常備されてる介護施設に2年前から入っている。以前は二週間に一度くらいの割でお見舞いに行っていたのだが、私も色々あって今回は一か月以上ご無沙汰してしまった。そしたらP爺さんから催促のテキストが来た。

「いつ来るんじゃ?最近、顔見みせんのう」

P爺さんは生涯独身で親せきは皆州外。後見人の女性が時々様子を見に来るが、彼女は家族ではない。P爺さんにとって家族と言えるのは我々くらいかもしれない。面会に来るのは後見人以外は我々だけなので、施設の看護婦さんが「どういうご関係ですか?」と不思議そうに聞く。その度に「友達です」と答えるのだが、看護婦さんは微笑みながら怪訝そうな顔をする。

二年前にここに入った時は寝たきり老人だったP爺さんは、最近一人で車いすに乗れるくらい元気になったので、いまのような半分病院といった施設ではなく、アシステドリビング"Assisted living"と呼ばれる介護施設に移ろうと考えていると言う。それでちなみにその施設はどのくらいお金がかかるのかと聞くと、「ふむ6000ドルから8000ドルだそうじゃ。介護の度合いに寄るらしい」うわあ、高い、と言うと「それでもここよりはずっと安い」とP爺さんは笑った。

え?いったいここはいくらくらいするの?「月1万ドルは固い」保険は効くの?「保険?わっはっは、そんなもの効くわけないじゃろ」とP爺さんは高笑い。「若いころから貯金と投資をしとってよかったわい。」とP爺さんは特に気に留めた様子もなく言った。

まあ何十年も同じ職場で地道に働いていたし、独身だったから貯金も投資もかなりあるのだろう。P爺さんは堅実で、これといった贅沢もしていなかったから。

「もうこの年になったら贅沢は介護施設くらいじゃよ。世界一周旅行をするわけでもないしな」とP爺さんは笑いながら言った。

私が値段を聞いた理由は、もし手頃なら親友の居る同じ施設にお爺ちゃんを預けたいと思ったからだ。しかしお金に余裕のあるP爺さんと違って認知症で貯金を使い果たしてしまったお爺ちゃんにはとても無理な相談だった。

ちなみにお爺ちゃんが入ることになっている施設は月3500から4500ドル。これも介護の程度による。P爺さんの施設の半額だ。もっともお爺ちゃんは認知症とはいえ身体は元気なので四六時中介護が必要ということもない。無論こちらも保険は効かない。

若いころに長期療養保険というのに入ってかなり高額の保険料を払っていたのなら別だが、それも考えものだ。保険会社は保険料は喜んで受け取るが払う時は出し渋るのが定番。どうせなら将来のために貯金をしておいたほうが保険を頼りにするより確実だろう。

ところで南カリフォルニアには日本語しかわからない老人のための介護施設がある。私は年を取って耄碌して英語を忘れてしまったら、そういう施設に入れてもらおうかなと考えている。日本に帰って日本の施設に入るという選択肢もあるが、今更日本で暮らせるだろうか?

もし私が両親と同じくらい長生きできるとしたら、まだあと20年は軽く生きられそうなので、まだまだ先の話だろうとは思うが。